「買収当時、スプリントは6年連続の赤字垂れ流しで、取引銀行でさえ『デフォルトの可能性がある』と公言して憚らなかった。孫さんの狙い? スプリントに続いて米国4位のTモバイルUSを買収し、業績が好調な同社の力を借りてスプリントを再建すれば、世界一の通信会社AT&Tと互角に渡り合えると、自分に都合のいいアメリカンドリームを考えたからに他なりません」(大手証券マン)
しかし、孫社長による派手なロビー活動にもかかわらず、米当局は「消費者にとって国内の携帯電話は(ベライゾンを含む)4社体制が望ましい」として、スプリントによるTモバイル買収を認めなかった。
「そもそも、Tモバイルを買収するには3兆2000億円からの巨額な資金が欠かせない。そうなれば、ただでさえ借金地獄に陥ったソフトバンクの有利子負債は10兆円規模に膨らみます。自力で再建を進めざるを得なくなったスプリントをテコ入れする余裕などありません」(同)
ソフトバンクは、もはやスプリントだけを保有していても意味がない。Tモバイルの買収失敗は米携帯市場への参入計画そのものが“中折れ”したに等しく、またアナリストの“予想”通りスプリントが破綻となれば、親会社としてもただでは済まない。ユーザー救済のため、米政府が乗り出すとの見立てもあるが…。
「現実問題としてソフトバンクはスプリントと心中する覚悟はない。そのことは孫さん自身が承知しています」(経済記者)
策士、策に溺れる…。世界一は風前の灯火だ。