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100回目の夏 高校野球は送りバントのドラマだ

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 100回目のメモリアルを迎える今年の夏の甲子園大会には、史上最多の56校が出場する。予選中から最大の焦点とされていたのが、大阪桐蔭(北大阪)の行方だった。頂点に立てば、史上初の「2度目の春夏連覇」となるからだ。

 過去、春夏連覇を成し遂げたのは、2012年の大阪桐蔭を含めて7校。最も印象深いのは、87年のPL学園と98年の横浜高校だろう。当時のPL学園には、のちにプロ野球界でも活躍する野村弘樹(横浜)、片岡篤史(日本ハム−阪神)、立浪和義(中日)、橋本清(巨人−ダイエー)、宮本慎也(ヤクルト)らがいた。横浜高校も松坂大輔(現中日)をはじめ、4人のプロ野球選手を輩出している。大阪桐蔭もドラフト候補が多く、一部報道によれば、その人数は6人とも7人とも言われている。

 突出した選手がいることは3校とも同じだが、大阪桐蔭にはPL、横浜と異なる点もある。
 ※ ※
〇センバツ大会
 87年 PL学園(5試合) 13犠打
 98年 横浜 (5試合) 18犠打
 18年 大阪桐蔭(5試合) 9犠打
〇夏の甲子園
 87年 PL(6試合) 22犠打
 98年 横浜(6試合) 22犠打

 大阪桐蔭は”送りバント”が少ないのだ。春と夏では試合数が「1」しか変わらない。PLがセンバツで使った犠打の数は1試合平均で2.6個。夏は「3.7個」まで跳ね上がる。両校とも夏に犠打数が激増している。大阪桐蔭は「強打者ぞろいなのでバントを使う必要がない」と言われればそれまでだが、野球とは「流れをつかむスポーツ」でもある。試合の主導権を握り、堅実に走者を進めるために犠打を用いるのだ。また、「流れ」という点で考えれば、野球は特異な球技でもある。サッカー、バスケなど他の球技で主導権を握るには、ボールを長く持たなければならない。しかし、野球で言う主導権とは得点であり、攻撃だ。いかに守備に就く時間を短くするかを考えなければならない。

 近年、送りバントとヒッティングの強攻策とを比較すると、得点率はさほど変わらないという。それでも、犠打を選択するのは、守備に就く時間を長くするためだろう。バントの構えをすれば、内野手も前進し、ベースカバーなどのフォーメーションを整えなければならない。バッテリーのサイン交換も複雑になる。87年のPL、98年の横浜はともに高いチーム打率を誇ったが、犠打の作戦を採用した理由はこのあたりにありそうだ。

 今年のセンバツで4強入りを果たした三重、同8強の日本航空石川、また、延岡学園、東筑などの強豪校が予選で敗退した。相手をナメたわけではないが、強豪校は一般校とぶつかると、強気な作戦をとりがちだ。

 「強豪校は予選の決勝にピークを持っていこうとし、直前まで猛練習をこなします。球児が疲れて思うように動けなかったなんてこともあれば、土日曜日は遠征や招待試合、土曜早朝にバスで出発して、日曜深夜に学校に戻ってくることも珍しくありません。慢性的な寝不足と疲労感、加えて彼らは『勝って当然』という重圧も抱えていて…」(私立高校指導者)

 100回目の夏も、送りバントからドラマが始まりそうだ。(一部敬称略/スポーツライター・美山和也)

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