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プロレス解体新書 ROUND76 〈初代GHC王座決定戦〉 三沢vs高山“必殺技のエール交換”

 メジャーからインディーのプロレス、さらには総合格闘技までも股にかけて活躍を見せてきた高山善廣。実質的にフリー転向前の最後の試合となったのが、2001年4月に有明コロシアムで行われた三沢光晴との「初代GHCヘビー級王座決定トーナメント」の決勝戦だった。

 今年5月の試合中に回転エビ固めを仕掛けようとして頭を強打し、頸髄完全損傷の大怪我を負った高山善廣。一時は呼吸困難、心拍停止にまで至り、現在、意識は回復したものの肩から下の感覚がまったくない寝たきりの状態が続いているという。
 盟友の鈴木みのるが旗振り役となって、高山を支援するための組織『TAKAYAMANIA』を発足。今後はプロレス各団体の試合会場で募金箱の設置や応援グッズの販売、高山プロデュースによる興行開催などが予定されている。
 「フリーの選手に対して、ここまで多くの関係者が支援の声を上げるのは、もちろん高山の人柄があってのことですが、加えて現金なことを言うと、そうするだけの価値あるレスラーだということでしょう」(スポーツ紙記者)

 その日本人離れした巨体といかにも悪役風のイカツイ容貌は、御大ジャイアント馬場が惚れ込んで、自ら全日本プロレスへの参戦を誘ったほど。
 「テレビ解説でも分かるように頭が切れて、試合を見る目は確かだし、コメントも面白い。観客心理の洞察力にも優れている。しかも、UWFインターナショナル仕込みで基礎もしっかりしているという、まさに完璧なプロレスラーの1人と言えるでしょう」(同)

 Uインターを継承したキングダムが崩壊し、全日にフリー参戦するようになると、ヒールレスラーとしての才能が一気に開花。大森隆男とのチーム「ノーフィアー」では世界タッグ王座を獲得するなど、トップの一角にまで食い込んだ。
 その後、フリーの高山が全日からプロレスリング・ノアの正式所属選手となったのは、三沢光晴の誘いによるものだった。
 「高山としては所属にこだわりはなかったが、三沢との闘いでプロレスの奥深さに触れたことで、ずっと一緒にやっていきたいとの思いから誘いを受けたと、のちにインタビューなどで語っています」(プロレスライター)

 そうして'00年のノア旗揚げに参画した高山だが、1年も待たずにフリー転向となったのは、同年5月27日に開催された総合格闘技大会『PRIDE14』に参戦するためだった。
 同年3月の『PRIDE13』で日本人エースの桜庭和志が、ヴァンダレイ・シウバに当時としてはまさかの敗北を喫し、旗揚げ当初の看板だった高田延彦も第一線から引いた状況で、PRIDEは新たな日本人スターを切望していた。
 「高山自身としても腕試しをしてみたい気持ちはあったでしょうが、それ以上に金銭面も含めたPRIDE側からの誘いは、相当に強烈なものだったと思われます」(同)
 PRIDE参戦について高山が三沢に相談すると、三沢はこれを快諾したという。フジテレビが放送するPRIDEに出場するとなると、当時、ノアを中継していた日本テレビと放映権をめぐる問題が生じるため、高山はノアを退団してフリーになることを宣言することになった。

 そうした話が進む一方、ノアでは初の独自タイトル制定に向け「初代GHCヘビー級王座決定トーナメント」が行われていた。所属選手と常連外国人、全16人から決勝にコマを進めたのは、準決勝で秋山準に勝利した三沢と、反則ながらも初のベイダー超えを果たした高山だった。
 「一般的な感覚からすれば、退団が決まっている高山に花を持たせる必要はなかったわけで、このあたりに三沢の度量の大きさが感じられます」(同)

 向かえた4月25日、有明コロシアムでの決勝戦。技と技の派手なぶつかり合いを売りとする四天王プロレスとはまた違う、グラウンドでの攻防から試合は始まった。
 まずペースを握ったのは高山で、ミドルにハイ、膝蹴りで三沢を追い込むと、早くもエベレスト・ジャーマンを連発。これをなんとか返した三沢が座った状態でいるところに、高山が真正面から顔面キックを放つと、三沢のあごの下がパックリと切れてしまう。
 首元からはおびただしい血が流れる中、そんなアクシデントにも三沢は冷静で、脇固めや腕十字、三角絞めと、他の選手が相手のときには見せない関節技で反撃を開始する。
 一方の高山も、タイガー・ドライバーを連発する三沢の隙を突いて、しっかりブリッジを利かせたタイガー・スープレックスで逆襲する。三沢のサブミッションに高山のタイガー殺法、互いの得意技をそれぞれ披露する姿は、まるでエール交換のようでもあった。
 フィニッシュはエルボー乱打を受けて息が上がり、舌を出してあえぐ高山を抱え上げて、必殺のエメラルド・フロウジョン。三沢自らマットに膝をつき、しかと脳天から落とす完璧な一撃だった。

 この一戦のメインテーマが、初代GHC王者の誕生であったことに違いはない。しかし、高山のPRIDE進出の裏事情を考え合わせたときには、その船出を祝う壮行試合、あるいは高山が三沢へのこれまでの感謝の思いを込めた、一本刀土俵入りのようでもあった。

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