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WBCの後遺症(3) 代表チームがあるから? 「ライバル球団選手との自主トレ」を巡る是非

 阪神・藤浪晋太郎(23)が鳴尾浜球場で練習を再開させた(4月20日)。藤浪は「ローテーションで投げている投手として、やってはいけないことだと思っている」と、インフルエンザA型に感染して一軍登録を抹消されたことを反省していた。

 「WBCの疲れもあったんだと思います。本人に自覚がなくても、疲労で体調も崩れていたんだと思います」

 取材記者の多くが藤浪を擁護していた。藤浪の野球に対する真摯さ、練習熱心さからそう言われたのだろう。

 だが、問題は復帰後の投球内容だ。藤浪は今季から投球フォームを変えている。無駄な力を入れない「脱力投法」だ。この投球フォームだが、厳密には2015年1月、現ドジャースの前田健太との自主トレで“ヒント”を掴み、昨年オフ、これまた自主トレで一緒だったダルビッシュ有にアドバイスをもらって、今に至っている。

 「向上心の強い投手なので、先輩たちの長所を吸収しようとしています」(球界関係者)

 無駄な力を除いて、バランスの良い投球フォームでキレのあるボールを…。得点圏に走者を置いたときにギアを上げる…。藤浪の目指す方向性は間違っていないが、この投球フォームの改造について、全員が賛成しているわけではないようだ。

 投手出身のプロ野球解説者がこう言う。

 「藤浪という投手の特徴は猛々しさ、ストライクゾーンで適度に暴れているというか、力強いボールを投げるところが最大の長所。脱力系のフォームはその長所を殺してしまう」

 猛々しさ。その長所は短所でもある。藤浪は与四球も多い。そのため、たとえ完投勝利を飾っても、他の先発投手よりも投球数が多くなる。守っている野手の側からすれば、テンポの良くない投手ということになる。

 藤浪はさらに高いレベルを目指すため、投球スタイルそのものを変える必要があると思ったのだろう。

 その向上心には首脳陣も一目置いているが、“フロント泣かせ”でもあるようだ。

 自主トレ期間の12月、1月だが、球団は選手を“完全管理”できない。監督、コーチも選手を指導できず、一般論として、選手がどこで誰と練習をしても自由なのだ。しかし、チーム関係者によれば、阪神は「高卒選手は入団から3年間、二軍の鳴尾浜球場で合同自主トレをするように」と課している。藤浪が前田健太との自主トレを行った2015年1月は、プロ2年目のシーズンを終えた後。藤浪は契約更改の席でその要望を伝え、球団は特例でそれを認めた。

 「球団は快諾したわけではありません。藤浪の熱意に根負けしました」(チーム関係者)

 藤浪は球宴出場、2014年10月の日米野球に招集され、他球団エース投手の調整方法や体調管理、練習方法などを見入っていた。自ら歩み寄って質問もした。

 「当時、他球団選手が愛飲しているサプリメントにも興味を示していました。一部球団は、選手が自由にサプリメントを服用できるよう、球場内にサプリメントバーを設置しています。藤浪は阪神フロントにサプリメントバー設置の検討もお願いしていました」(前出・同)

 当時はまだ20歳だったはず。こういうフロント泣かせはむしろ歓迎すべきだが、こんな指摘もある。年長のプロ野球OBが言う。

 「ひと昔前なら、対戦チームの主力選手と自主トレをするなんて考えられなかった。同じチームでも先輩の自主トレに同行することを嫌がる選手もいました。先輩の自主トレに同行するということは、『この選手を超えられません』と言っているのも同じだから…」

 12球団の精鋭を集める侍ジャパンが常設され、ライバル球団との垣根はほとんどなくなった。技術論やトレーニング情報を共有し、結果で勝負する…。そんなスポーツマンシップは否定できないがしかし、仲が良すぎるのもいかがなものか? 試合前、今回のWBCを戦った精鋭たちが笑顔で挨拶を交わす姿に、年長のプロ野球解説者は「早く気持ちを切り換えてくれ」と嘆いていた。(了)

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