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64年後の蘇生

 葬式。祭壇の棺を見つめる参列者たち。親しくしていた人たちの心に去来する思い出が、寂しさを一層強くする。その時、棺が微かな音を立てた。まさか。そう思う間もなく、棺がカタンと揺れると同時に、死んだはずの故人がムックリ起き上がった。

 この手の話は、現実に幾つも起きている。最近では葬儀のあり方も多様化し、息を吹き返した場所が葬儀場である保証は無い。もし、そこがバミューダ海域だったら?
 死人が生き返る。それだけでも奇妙な出来事なのに、更に、奇妙な事態となるようだ。

 1990年2月。操業中の一隻の漁船の元に、白く大きな布袋が流されてきた。引き上げて開けてみると、中から60歳過ぎくらいのやつれた男性の死体が出てきた。船員たちの好奇心が悲痛な感情へと転換した、その時、死体だと思っていた男性が叫んだ。「ここは、どこだ!?」目まぐるしく変化する感情。今度は驚愕する船員たちが聞いた事情とは。
 男性の名はミッシェル・ガヤン。フランスからバミューダへ移住してきた。しかし、がんに侵された彼は、1926年、水葬にして欲しいとの遺言を残し、63歳で死んだというもの。
 船員達はそんな話を信じられるはずもなく、どれくらいの時間かはわからないが、袋詰めで海を漂流していたのだ。精神に異常をきたしてしまっていても不思議はない。衰弱しているだろうし、健康状態も診て貰った方がいいと、病院へ連れて行った。そこは彼が最後の時を迎えた病院だった。病院には彼のカルテが残っていて、1926年にがんで死亡したという記録があり、遺体は遺言通り布でくるみ海へ流したことも確認された。更に、死亡証明書の指紋との照合も一致し、間違いなく同一人物とされた。
 先述したように、葬儀中に死人が生き返ったという事象は起きている。ミッシェル・ガヤンは遺言通り水葬にされたため、海で息を吹き返してしまった。しかし稀に起き得る事象として片付けられないのは、それが64年後に起きたということだ。それだけではない。生き返ったミッシェル・ガヤンは、本来なら127歳であるはずが、死亡したとされる63歳のままなのだ。彼の身に何が起こったのかはわからない。そこがバミューダ海域であることに意味があるのだろうか。

七海かりん(山口敏太郎事務所)

山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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