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海を彷徨う亡者

 お盆休み目前。海は休暇を過ごす人々で賑わうことだろう。波音は、普段喧騒の中に身を置く現代人に安らぎを与え、果てしなく続く大海原は、ロマンに満ちている。

 反面、海は古来より怪異が多く起きる場所でもある。もし、夜に櫂を漕ぐ音が聞こえても、沖を窺ったりしない方がいい。亡者の船はいつまで待っても到着しないだろう。また、それが幸いでもある。

 周囲を海に囲まれた我が国では海に対する畏敬の念は深く、今日でも盆の間は漁を控える漁村は少なくない。海で亡くなった者たちが、怪異をもたらすと言い伝えられているからだ。

 しかし、その類に無頓着な者はいつの世も存在する。昭和10年頃、ある漁村で言い伝えなど気にしない4人が、盆の夜に船を出した。漁を始めてみると、大量のサバが捕れる。意気揚々と漁を続けていると、海面に何か浮かんでいるのに気が付いた。よく見ると人間の生首で、笑ったり転がったりして気味が悪い。これには言い伝えを気にしない4人も恐れをなし、漁を止めて帰った。無事帰りついて安堵したのも束の間、大漁だった筈のサバを見ると、全て草鞋だった。そして、4人は次々に発狂して死んでしまったという。

(七海かりん/山口敏太郎事務所)

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