search
とじる
トップ > スポーツ > 球界因縁のライバル(4) 松坂VS上原(下)

球界因縁のライバル(4) 松坂VS上原(下)

 「大阪体育大の上原はほぼメジャーのエンゼルス入りが決まっていた。それをひっくり返すために、巨人は数億の金をつぎこんでいた。だから、天下の長嶋さんでも松坂指名に変えることができなかったんだよ」。巨人OBがこう明かす。

 長嶋監督の松坂に対する熱愛は本物だったが、上原の逆指名獲得への球団側の規定路線はひっくり返せなかった。だが、上原には長嶋監督の松坂への思いが伝わってしまっていたのだろう。長嶋監督と上原の間にすきま風が吹いていたのは確かだった。
 神宮のヤクルト戦で、長嶋監督のペタジーニ敬遠の指示に涙したこともあった。巨人のエースとしてのプライドが傷つけられたのだろう。長嶋監督が二岡と上原を間違えたという話もある。「2人とも今風の顔だから、似ているだろう。だから間違えたんだよ」と長嶋監督は屈託がなかったが、上原の方にはわだかまりがあった。
 上原が巨人入りせずに、初志貫徹してエンゼルス入りをしていたら、野球人生はどうなっていたか。ドラフト1位候補だったのに、新日本石油ENEOSから日本のプロ野球を経ずにレッドソックス入りして大騒動になった田沢純一より前に、パイオニア的存在になったのは確かだろう。巨人入りに際しては「将来のポスティングでのメジャー入りの密約が間違いなくある」と言われたが、上原のポスティングでのメジャー入り要求は実現しなかった。口約束程度で、念書はなかったということなのだろう。ポスティングを認めている球団へトレードしてもらい、そこからメジャー入りという三角トレードのような形の仰天移籍まで画策したが失敗。結局、FAの権利取得まで待つしかなかった。

 一方、「将来はメジャーに挑戦したい。FAでは遅すぎるので、できればポスティングで」と明言していた松坂は、念願かなって西武からポスティングでレッドソックス入りしている。ドラフト前に「横浜以外に指名されたら、社会人の日本石油(現在の新日本石油ENEOS)入りします」と松坂は宣言していた。交渉権を獲得した西武側が入団に際し、ポスティングでのメジャー入りを認めていた可能性がある。実際にドラフト直後に密約説もささやかれていた。
 ポスティングでの明暗劇もある上原VS松坂だが、メジャーでの立場の違いは歴然としている。昨年18勝した28歳の松坂に対して、フランコナ監督が万全な状態になるまで復帰させない方針を強く打ち出している。マイナーで調整登板させるなど慎重の上にも慎重な構えだ。もちろんエース待遇だからだ。
 34歳の上原には後がない。毎試合、結果を出していくしかない。しかも、「持病があって下半身に不安があるから、移動も大変な長丁場のメジャーでは絶対に1年間持たない。どこかで必ずケガをする」と巨人関係者が断言する体力的な不安を抱えている。どこから見ても上原が松坂をしのぐことは不可能だろうが、直接対決でひと泡吹かせることができるかどうかだろう。WBC日本代表のエースの座も松坂に取って代わられた上原にとって、長年、巨人のエースを務めた最後の意地を見せられるか。雑草魂の見せどころになる。
 巨人を解雇され、テスト入団でメジャーのパイレーツに一時昇格した、現在早大大学院生の桑田氏のように、「野球人生の最後をメジャーで」という幕引きの記念受験のような形では、上原のメンツが立たないだろう。

関連記事


スポーツ→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

スポーツ→

もっと見る→

注目タグ