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【不朽の名作】格闘ゲーム原作作品としてはかなりレベルの高い「ストリートファイターII MOVIE」

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 ゲーム作品、特に格闘ゲームの映像化というのは、テレビ化や映画化してもがっかりする作品が多い。それは映像形態がアニメだろうと、実写だろうと同じだ。そのなかで、1994年公開の『ストリートファイターII MOVIE』は、かなりレベルの高い作品と言える。

 同作はアーケードや、家庭用ゲームで大ヒットを記録していた、ストリートファイターII(ストII)シリーズで新キャラ追加や、ゲームバランスを再調整した『スーパーストリートファイターII X』を原作としたアニメ映画となっている。作品よりミリオンヒットを記録した篠原涼子が歌った挿入歌『恋しさと せつなさと 心強さと』の方が現在では有名かもしれない。

 なぜ、格闘ゲームを題材とした映像作品が残念なものが多いかというと、そのキャラの多さがまずある。一応、ゲームにおいてのメインキャラは存在するが、他のキャラにもスポットを当てなければならず、特にテレビアニメでやる場合、それぞれのキャラに申し訳を立てすぎて、たとえゲームの内容を知っていたとしても、ストーリーがあちらこちらに飛びすぎて、観ていて苦痛になる場合が多い。その点この作品では、劇場作品という限られた尺のなかで、メインキャラ以外には、アクションシーンを必ず用意して見せ場を作っている。

 各キャラ、登場時間には偏りはあるが、ゲームでの技再現を挟むなどし、それなりに、活躍の場を用意しているのがこの作品の特徴だ。当時新キャラであったキャミィ、フェイロン、ディージェイ、サンダー・ホークを含むと16キャラクターをさばかなければいけない状況で、この仕掛けは成功だっただろう。

 また、同作のアクションシーンはかなりこだわって作られており、見ごたえがある。格闘ゲームを映像化する際に大きな問題となってくるのが、アクションシーンでの必殺技の挿入の仕方だ。カットを変更して必殺技を入れてしまうと、間の抜けたものになるケースが多いが、この辺り同作では徹底しており、打撃系・投げ技系の必殺技は通常の打撃アクションの合間に自然と挟む形で、飛び道具系の技のみ、別のカットを用意して見せるという方法をとっている。アクションシーンの動きを切らずに、流れのなかで各キャラの技が入るため、テンポがとても良い。

 さらに、流れのなかとはいえ、確実にその技だとわかる演出方法になっており、原作ファンにも納得できるレベルになっているのが、この作品の印象的なところだ。当時K-1でスター選手だったアンディー・フグなどがアクションシーンの監修に入っており、かなり協議を重ねたであろう努力の数々がこのアクションシーンには活きている。打撃を打ち合う時の乾いた音なども、かなり迫力がある。また不用意にBGMを入れないあたりも好感が持てる。音楽担当に、当時ヒット曲を連発していた小室哲哉が関わっているにも関わらずだ。とはいっても、別に技名は格闘中に無理に叫ぶ必要はないとは感じるが…。

 この作品、当時は声優と俳優の境界が今ほどはっきりしていなかったものの、一部キャラに現在の芸能人声優起用とも言えるものがあり、特にリュウ役の清水宏次朗の「昇竜拳!」などの叫び声がイマイチで、所々拍子抜けする部分がある。ちなみにケン役の羽賀研二と春麗役の藤谷美紀は意外と合っている。

 なお、同作の春麗のアクションシーンには、特に気合が入っている。他キャラが劇中で、ゲーム遵守のコスチュームを着ているのにも関わらず、春麗だけは、Tシャツにパンツを履いているだけという薄着コスチュームで、湯上がりを襲撃してきたバルログと対決している。蹴り技を繰り出す度にパンモロになるという状態で、『仮面ライダーストロンガー』の電波人間タックルや、過去のアニメ作品で培われたパンモロ戦闘の美学をこれでもかと詰め込んでいる。その並々ならぬこだわりに、明らかにお色気シーンにも関わらず、芸術性を感じてしまう。これだけでも、この作品を観る価値はあると。

 スポットのアクションシーンでメインキャラ以外の見せ場を作ることで、ストーリーラインも至って単純になっている。ゲームでもラスボスとなっているベガが首領の組織、「シャドルー」を倒すという展開になっており、原作でもベガと関わりの強い、春麗とガイルに全体的な舞台の構築を任せている。そこに流浪の旅をしているリュウを、同門で親友でもあるケンの危機を知らせて参加させるという形だ。

 当時は、現在より格闘ゲームキャラクターに、細かいストーリー設定が決まっていなかったこともあり、細かい世界観の構築は割りと自由にやっている印象だ。この辺のゲームとは本来関係ない世界観の構築は、80年代後半から、90年代に流行ったOVA(オリジナルビデオアニメ)の功績も大きいかもしれない。原作ゲームのイメージを崩さない、適度なSF要素が、劇中に盛り込まれている。

 これでサガットの扱いがもっと良ければ完璧だった気がする。冒頭でリュウとの因縁を演出しておきながら、最終決戦にはベガにシャドルーでの別任務を命令され参加せずという残念な状態だ。せめて、ラストのリュウが荒野を歩くシーンで、サガットを待たせるべきだったではないだろうか? シャドルーが崩壊した後にただのファイターとしてリュウと再び対決するという構図の方がいいと思うのだが、あのラストシーンをやるよりは。

 ストリートファイターIIシリーズの映画化というと、同時期にジャン・クロード・バンダム主演で公開された、『ストリートファイター』ハリウッド映画版が存在する。こちらの作品は原作の面倒な設定を一切無視して、ストーリーを新たに構築したような形となっており、ネタ方面ではかなり楽しめるが、ストIIの映画であるということを考えると残念な出来だ。ストIIという人気シリーズに正面から向き合って作った作品を観たいのであれば、『ストリートファイターII MOVIE』の方をオススメしたい。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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