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コンピューターゲームの20世紀 第19回…『ときめきメモリアル』

<同級生の大ヒットが背景に!?>
 『ときめきメモリアル』の登場は、色々な意味で衝撃的であった。発売元はあのコナミ。ゲーム黎明期から様々なゲームを手がけヒット作を連発。PCエンジン参戦以降も『スナッチャー』や『グラディウスII〜ゴーファーの野望〜』など、高品質のゲームで多くのゲーマーを虜にした、あのコナミだ。
 コナミはPCエンジン参入時から一貫して移植作にこだわり続け、オリジナル作品の登場は8作目の『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』を待たねばならない。とはいえ、この作品はご承知のようにシリーズモノ。その意味では『ときめきメモリアル』こそが完全なるPCエンジンオリジナル作品となる。まさか記念すべき初の完全オリジナル作品が、美少女を題材にした(というと語弊があるのだが)ゲームになろうとは。ただPCエンジンというのは、成人向けとは言わないまでも、男性ユーザーを意識したゲームが数多く登場しているのもまた事実である。
 しかしながら、美少女の恋愛に的を絞ったゲームがコンシューマー市場に登場することは異例中の異例だ。このジャンルのゲームはそれまでパソコンの独壇場であり、ほぼ全てがいわゆる成人向けの内容。1992年に『同級生』が登場するまではストーリー性を重視した恋愛ゲームは数えるほどしかなく、要はビニ本などと同様に、男性の性的欲求を満たすものでしかなかったのである。同級生にしても、当初の内容は80年代にこぞって開発されたナンパゲームの一種に過ぎなかったのだ。
 しかし同級生は開発途中で方針を転換。個々にストーリー性を持たせた結果、成人向けゲームとしては異例の大ヒット作となり、その後、エロシーンを省いた形でコンシューマー機にも移植。エロゲの地位向上に大きく貢献した。

<3年間の高校生活で男を磨け!>
 この成功を意識したか否かは定かではないが、コナミは同級生とは全く別の味付けを施した恋愛ゲームを開発する。それがこの『ときめきメモリアル』だ。
 間接的な表現も含め、性描写は一切なし。だが、この英断が奏功した。ゲーム内に登場するのは純粋無垢な女の子たち。だからこそ、品切れ店が続出するほどの大ヒットに繋がったのであろう(生産数自体が少なかったという問題もあるが)。ちょっと前に論争を巻き起こした『ラブプラス』の漫画のように、こういったゲームを好む人は程度に関係なく、お気に入りの女の子のエロ描写に敏感だ。ほんの些細な発言でもビッチ扱いされてしまうのだからたまったもんじゃない。まあ、私も若かりし頃は処女性を重んじていたことがあるので、その気持ちは分からなくもないが…。
 ちなみに、ときメモではどの女の子たちともゲーム中に恋人関係に発展することはない。明らかに頬を赤く染めているのに告白は卒業式を待たなければならないし、ましてや自分から想いを伝えることなどできない(「伝説の樹の下での女の子からの告白で生まれたカップルは永遠に幸せになれる」という設定があるため)。たとえば虹野さんが栄養満点の弁当を作ってきてくれても、みはりんが毎日のように体当たりを仕掛けてきたとしても、「好きだ」の一言をグッとこらえ、卒業式で告白されることを夢見ることしかできないのである。
 大人の恋愛を経験した今となってはもどかしいことこの上ない。だが、初恋というものは村下孝蔵の名曲「初恋」にもあるように、一途に想うだけで終わってしまうことが多いのもまた事実。従い、ときメモにおける“告白できない辛さ”というのは、それはそれで的を射ていると言えなくもない。

<現実世界での恋愛は非常にシビア>
 また、本作は“育てゲー”としてのも側面も持ち合わせており、自らの分身である主人公は、ゲーム開始時こそ冴えない高校生に過ぎないのだが、高校3年間で自らを磨き続けた結果、手の届かない存在とさえ思われた学園のスーパーアイドル・藤崎詩織から告白されることだってあるのだ。
 自分を磨くだけで意中の人から告白されるのなら誰だって頑張る…と、プレイ中は何度もそう思うのだが、果たして本当にそうだろうか。好きな人に振り向いてもらうために、自らを磨く努力を怠ってはいないだろうか…。
 自問自答の末、私は自分自身を磨くことに決めた。毎朝6時に起きてランニングをやり、夜は机にかじりつくのだ。あの娘に「好きです」と言ってもらいたい一心で。ところが私のあの娘は、私が自分磨きに励んでいる最中、さっさと彼氏を見つけてしまったのである。その間わずか一か月。
 なんというビッチ。もう死んじゃえ…などとはさすがに思わなかったが、リアルワールドではこういった理不尽な出来事(全然理不尽じゃないけど)も当然起こり得るのだ。というわけで、私の卒業式の思い出は、プロレス愛好会の仲間と開催した“卒業プロレス”のみ。ジャイアントスイングでグルグル回されながら、脳内では「女々しい野郎どもの詩」が延々と繰り返されていたのであった。嗚呼、青春よもう一度…。(内田@ゲイム脳)

(C)1994 KONAMI ALL RIGHTS RESERVED.
(C)2010 Konami Digital Entertainment

DATA
発売日…1994年5月27日
メーカー…コナミ
ハード…PCエンジン SUPER CD-ROM2
ジャンル…恋愛SLG

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