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難民の新オアシス「ネットルーム」

 「ネットカフェ難民」はもう古い。業界では一日単位でスペースとパソコンを利用できる「ネットルーム」への転換・拡大が始まっている。長期滞在を想定したこの新サービス、住環境に恵まれない利用客を中心に盛況だが、消防法などの適応が極めてあいまい。今後予想される業者の急増で、行政当局から規制強化が狙われそうだ。

 首都圏でインターネットカフェ事業を展開するマンボーが、東京・大田区のJR蒲田駅前ビルに30室のネットルームをオープンしたのは、今年4月のことだ。
 2畳ほどのスペースに机とイス、インターネットに接続するパソコンが設置されているのは、やや広めのネットカフェといった様相。部屋にもよるが、脚を伸ばして横になることができる。
 完全個室で、室内には空調設備や洗面台まである。共同のトイレ、シャワールーム、コインランドリーなどが設置されている半面、ネットカフェでは当たり前の、飲み物の無料サービスはない。マンボーは「事務所としても使ってほしい」(広報担当者)と期待するが、「トイレに行くのが面倒だから室内の洗面台で済ます」というトンデモ客の声もある。
 利用料は24時間2100円(1人用スタンダードの場合)で、1時間300円程度のネットカフェと比べると割安だ。

 ネット完備の個室を貸すという発想は、ウィークリーマンション事業を展開する大手不動産会社、ツカサ都心開発が先駆だ。2007年スタートしたツカサのネットルームは2年で都内14カ所に拡大。ネットカフェ本家のマンボーは、ネットルームでは逆に「異業種」からの新規参入。本業が違うだけに両社にはそれぞれの特徴がある。ツカサの建物はマンション用物件の利用である半面、マンボーは、ネットカフェ同様テナントビルだ。
 いずれも長期利用を想定。ツカサのある店舗では、「今いるお客さんが出て行かないと空かない」(窓口担当者)満室状態。マンボーも開店数日後には、大きなバッグを抱えた男性が数人、順番を待って受付カウンター脇の丸イスに腰掛けていた。
 利用者の長期滞在は、そこが一時利用施設なのか旅館なのか、あるいは住居なのかという問題に結びつく。それによって、旅館業法や消防法などによる規制の内容に違いが生じるのだ。
 宿泊施設には衛生管理体制が必要だし、不特定多数の客が寝泊りする旅館の場合、消火・防火設備の設置基準は、事務所やアパートなど集合住宅より厳しい。
 24時間営業のネットカフェが旅館業法の規制対象になるのでないかとの議論は以前からあった。16人が犠牲になった大阪市の個室ビデオ店放火事件(08年10月)で、同市が市内同種施設に立ち入り調査したところ、宿泊施設と紛らわしい営業実態が認められるなど全体の半数近くで問題があった。営業形態の似たネットカフェも、全国的に同傾向と見られる。
 ネットカフェで旅館業法抵触が問題となるのなら、長期滞在を想定するネットルームはより深刻だ。
 埼玉県蕨市のネットカフェ「CYBER@CAFE(サイバー・アット・カフェ)」が、利用者の住民票を置くことができるとして各メディアに登場したのは昨年ごろのことだ。
 マンボーも今年2月、ネットカフェ千葉中央店で同様のサービスを始めたが、千葉市が「居住環境とは認めがたい」とストップを掛け現在は棚上げ状態。蒲田のネットルームでもサービス内容に掲げてはいない。
 住民票の扱いが自治体によってまちまちで、統一の図られていないことが裏付けられた。
 派遣切りなどで住居を失った人だけでなく、短期上京する地方在住者などにとって、安く滞在できるネットルームは新たな「駆け込み寺」だ。ツカサ、マンボーの成功で、今後も参入が続出し、競争が激化するのは必至と考えられる。
 行政の介入は必至で、規制強化により魅力的な現行の料金体系が見直され、難民の「オアシス」でなくなるかもしれない。

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