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趣味の版画蒐集・海外画家の版画にはトラブル注意

 バブルが弾けた直後、まだ豊かな時代の余韻を残した画廊が数多く存在していた。多くの画廊では当時、一流画家のリトグラフ(石版)、シルクスクリーン(写真製版)などのオリジナル版画作品を主に扱っていた。中でも日本で人気のある画家の、シャガールやピカソ、ビュッフェなどのオリジナル作品は、数百万を超える作品も存在した。

 これら一流画家の版画作品は、レゾネと呼ばれる画家の作品総目録の中に掲載されている。これらオリジナル版画の意味とは、オリジナルの絵画は高価すぎて手が出せない愛好家向けに、画家が版画を制作する目的で下絵を描き、画家自らの手で刷るか、もしくは画家の監督下に職人が指示通りに刷り上げた作品である。その作品の1枚1枚に、画家自らが左下に限定番号、右下に自筆署名をしたもので、画家のオリジナル作品としての価値を持つものである。

 油彩は高価すぎて持てないが、版画ならば所有することができる。これらコレクターの間でオリジナル版画は流行した。さらには、フランスのインテリア版画を扱う画廊も登場してきた。これらの画廊は主にフランス画家のオリジナル版画を扱っていたが、価格的には安価なものが多かった。色合いが多彩な絵が多く、ギアマン、カトラン、カシニョール、ブラジリエ、エルテなどの作品で、女性に人気のある画家が多かった。

 よくデパートなどで、これら画廊が展示会を開いている光景をよく目にしたものである。だが、その後の長引く不景気で、多くの版画作品を扱う画廊が店を閉じていった。

 その頃、日本では無名な海外画家の版画作品を、高価な価格で売る業者が現れた。彼らは俗にキャッチセールスと呼ばれる商法で、絵画趣味の人間ではなく、若者や学生を対象に、それらの作品を売りつけることで社会問題にもなった。

 それら業者の扱う画家の作品は、日本ではほとんど値段がつかないものが多く、版画よりも額の方が高価な時さえある。彼らがターゲットとするのは、絵画に精通した人間ではなく、絵画とは無縁な若者の無知に付け込んでいる点で悪質と言える。

 これらの店舗には、版画の「は」の字も分からない素人の販売員が多い。筆者は以前、その類の店に入って接待した販売員を質問責めにして降参させたことがあった。飾られている版画の製法を聞いたのであるが、その女性販売員は「分かりません」と答えた。

 版画には、リトグラフを始め、エッチングなど数種類の製作方法が存在する。最低でも画廊を自称する販売員ならば、扱う作品の版画製法くらいは最低でも覚えているのが当然ではないだろうか。その販売員は筆者に対して「画廊の方ですか」と、しつこく何回も尋ねた。

 皆さんもこれらの店に立ち寄るときは、くれぐれもご注意を。

(藤原真)

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