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核ミサイル頼み 飢える朝鮮人民軍兵士の不満爆発寸前

 北朝鮮では金正日総書記の時代から、すべてにおいて軍事を優先する『先軍政治』をスローガンに掲げてきた。だが、金正恩委員長の時代に入ってからは、地上軍の弱体化が顕著だ。背景には兵卒たちの飢餓がある。任務より略奪や闇ビジネスが優先され、軍紀が乱れまくっているのだ。
 弱体化を招いているのは軍だけではない。国内の不満分子を逮捕し、強制収容所送りにしてきた国家保衛省(秘密警察)もまた弱体化している。北朝鮮では、人民軍と秘密警察が体制維持の両輪だ。両輪が外れれば金正恩体制は転覆する。

 人民軍の弱体化は、一昨年に当時の玄永哲人民武力部長(日本の防衛相に相当)が高射砲で“ミンチ処刑”されたことでも明らかだ。秘密警察トップだった金元弘も一時解任され、幹部らも高射砲で処刑された。
 兄・正男の暗殺が稚拙だったのは、暗殺のプロ集団人民軍総参謀部偵察局の作戦行動ではなく、失地回復を狙った秘密警察だったからという説が根強い。

 北朝鮮では10年以上前に配給制度自体が崩壊し、軍人や秘密警察の要員だからといって優先的に配給を受け取ることができなくなっている。
 「平壌に住む上流階層以外の国民は、闇市(チャンマダン)に進出し、商売などで自活せざるを得なくなっています。一方、軍の将校は食糧の横領、秘密警察や警察(人民保安省)は国民や犯罪組織からワイロを受け取って生活するありさまです。こうして警察機関の監視が不十分になったことで、国内の治安は悪化しつつあります。北朝鮮には'90年代に両親を失って路上で生活する“コッチェビ”が登場しましたが、生きながらえた者の一部は不良グループを形成し、次第に武装化。日本でいうヤクザ集団化しています。カネのある彼らは将校や佐官をアゴで使っているのです」(北朝鮮ウオッチャー)

 北朝鮮内部に不穏な空気が流れるさなか、またもや多数の中長距離弾道ミサイルや大陸間弾道ミサイルを工場から移動させ、発射準備を進めていることが明らかになった。米韓両軍は、10月10日の朝鮮労働党創建記念日の前後に、再びミサイルを発射するのではないかと警戒を強めている。
 正恩委員長は核・ミサイル開発および作戦を担う戦略軍司令部やサイバー戦力強化に資源を集中しており、食糧不足もあって野戦地上軍に対しては冷たい。
 「地上軍の軍紀の乱れを象徴するのが、飢えに苦しむ兵士たちが協同農場を襲撃し、農作物を略奪する事件が頻発していることです。農民からは『あんな盗賊みたいな奴らで米軍に勝てるはずがない』と罵られているほどです。飢えた兵士たちは国境を越えて中国にまで侵入し、たびたび略奪事件を起こしている。中国側では、地域住民が自警団を結成して対応するほどです」(同)

 韓国国防省が発表した'14年国防統計年報によると、人民軍兵卒の月給は日本円にしてわずか9円。佐官級でも約78円程度だという。平均的な4人家族の1カ月の生活費は7000円ほどといわれており、これでは最初から「違法行為に手を染めて“食いぶち”を確保しろ」と言っているようなものだ。
 「将校の多くは、兵士向けの配給を横流しすることで生活費を確保しているのです。だから兵卒は栄養失調になり、“口減らし”に自宅に帰される者が後を絶たない。帰ったところで食料にありつくことはろくにできず、コッチェビらのヤクザ集団と合流してしまうのです」(同)

 人民軍は海産物も支配している。北朝鮮ではどんな小型の漁船でも「人民軍の所属」であり、漁港では、ピンハネする管理者が目を光らせている。北朝鮮の漁師たちは「大和堆」(日本の排他的経済水域)がスルメイカなどの好漁場であることを知っている。日本の水産庁の船が軽武装した北朝鮮漁船から数十分間にわたり追跡され、揚げ句の果てには銃口を向けられたこともある。
 「こうした北朝鮮の無法行為に対し、日本政府は“抗議”するだけ。日本は自らの水産資源を奪われているだけでなく、回り回ってそれらが核・ミサイル資金になっているという現実に、もっと強固な対応をすべきです」(同)

 こんな状態だから、実際、北朝鮮は防空を担う戦闘機など燃料不足で飛べず、防空網も穴だらけだ。9月23日、米空軍の戦略爆撃機B1BとF15戦闘機が、これまでに例のない北朝鮮東方の国際空域最深部を飛行した。その際、北朝鮮軍の早期警戒レーダーが稼働しなかったことが米軍事関係筋によって明らかにされた。
 「北朝鮮軍は地対空ミサイルSA5(射程200〜250キロ)を保有し、敵機を早期に発見する探知レーダー(同400キロ)とミサイルの照準を合わせる射撃統制レーダー(同200〜250キロ)で防空運用していますが、深刻な電力不足で稼働しなかったのです。そもそも現状の北朝鮮のレーダーは'80年代に旧ソ連から導入、改良して使用を続けているもので、米韓軍の空からの攻撃に対抗できるような統合された防空網ではありません」(軍事ライター)

 朝鮮人民軍の総兵力120万人体制は、韓国軍と在韓米軍の合計の倍だ。ところが戦闘機には燃料が入っておらず、搭乗員のお腹も空っぽ。こんなハリボテ軍隊でも、核を保有しているというだけで、日米韓は手も足も出ないのである。

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