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特選映画情報『向こうの家』〜父から“不倫の後始末”を頼まれる高校生の当惑を描く異色ホームドラマ!

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提供:週刊実話

配給/東京藝術大学大学院映像研究科 渋谷イメージフォーラムにて公開
監督/西川達郎
出演/望月歩、大谷麻衣、生津徹、円井わん、でんでんほか

 配給が“東京藝術大学大学院映像研究科”となっているのが目を引く。西川監督は同大学院で黒沢清監督らに師事した新鋭。これが長編第一作となり、日本各地の映画祭でグランプリやベスト男優賞を受賞したりと好評だったため、正式に劇場公開の運びとなった。

 “不倫の後始末”を父に頼まれてしまう高校生、というおよそ“学生の映画”らしくない設定に、ボクも思わず「どれどれ、見せてごらん」と興味を持ってしまった次第だ。『向こうの家』という題名も悪くないが、ボクならもっとエロい響きの『別宅』にするね。

 自分の家庭は幸せ、だと思っていた高校生の萩(望月歩)は、父親の芳郎(生津徹)に別宅があったことを知りビックリするが、さらに父から、その不倫相手の瞳子(大谷麻衣)と別れることを手伝ってほしいと頼まれ二度ビックリ。自分の家と瞳子の家を往復するうち、彼は次第に大人の事情に気付いてゆく…。

 主演の望月歩は夏公開の『五億円のじんせい』でも“戸惑う若者”を繊細に演じていた。前回は金がらみ、今回はオンナがらみ。いかにも善良そうな顔の彼が“生臭い話”に巻き込まれるのが面白い。若者の潔癖感から、親父の不倫許すまじ、とならず、つい手伝うのがイイ。これが娘だったら絶対許さないだろう。私事で恐縮だが、十代のころ、親父がホステスさんとアヤしい、と知っても別に嫌悪感を感じなかった…。この映画のどこか憎めない父親を演じる生津徹の“軽み”が、許せる気分を醸し出すのだろう。これも大人への通過儀礼の1つ。金もオンナも若いうちに、そのアリガタさも厄介さも知っておいた方がイイ。ボクは親戚のオジサン気分で「大人もいろいろ。気にせず生きて行け、歩クン!」と応援したくなる。

 一見平凡で幸せそうな家庭にも“穴”がある。母親は「家族の会話は大切よ」と金科玉条のように言うが、この若者が、どこか家庭にさほど依存していない風なのが頼もしい。丘の上の家に住む不倫相手の瞳子さんを演じる大谷麻衣が、そんなに愛人タイプじゃないせいか、地に足ついた暮らしぶりに、つい彼が寄り添う感じも実に自然だった。彼女、『娼年』(18年)で、松坂桃李扮する男娼の最初の客として全裸で熱演してくれたが、今回はなぜか脱ぎナシ。本当はもっとエロス全開でもよかったが。

 まあ、これが橋本マナミみたいな愛人だったら、僕は大歓迎だが、話はもっとドロドロになっただろう。妻と愛人が対峙するシーンも小規模な火花程度。物足りなさを感じさせつつも、この監督のさじ加減が良いのかもしれない。一風変わった味の不倫劇であった。
 《映画評論家・秋本鉄次》

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