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『凪のお暇』で話題となった“毒親” 凪の母のように毒親化してしまう人の“心の闇”は

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黒木華

 20日、最終回を迎えたTBS系金曜ドラマ『凪のお暇』。黒木華が演じる“空気読み体質”の主人公・大島凪と母親・大島夕を演じる片平なぎさのやりとりを通して、夕の毒親ぶりが話題となっている。

 本作は、コナリミサト氏による同名漫画が原作。空気を読み過ぎるOL、凪が過呼吸を引き起こしたことをきっかけに、会社を辞め全てを捨てて引っ越し、新たな人生をスタートさせるというストーリー。その中で母親の夕は、過去から現在に至るまで“毒親”ともいえる振る舞いを見せていた。

 夕が毒親と評されるのは、娘である凪に金銭的に依存しきっている点や、凪の事情よりも自分の世間体や環境を優先する言動を見せていることが理由。ほかにも凪の個性である天然パーマを「みっともない頭」と言ってのけるなど、幼少期の凪にショックを与えるような自分本位な発言が目立っていた。これらのことから、凪に共感している視聴者や、毒親を持つという視聴者から非難を浴びてしまった。

 そもそも“毒親”という概念は「子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす親」という定義の下、日本では2015年頃から広く知られるようになった言葉である。アダルトチルドレンや毒親について詳しい精神科医・斎藤学氏は2018年の日立財団Webマガジン「みらい」内の論文で、毒親には「1.過干渉又は統制型、2.無視する親、3.虐待する親、4.病気の親(発達障害・精神障害等)」といった特定のパターンが存在するとした。凪の母親の場合は1の統制型に該当するだろう。

 親が子どもに対して支配的であり過ぎると、凪のように自分の気持ちを伸び伸びと表現することができず、人の顔色や空気をうかがいながら成長してしまう傾向がある。その結果、凪のように悩み、ある日突然全てを投げ出してしまいたくなったり、場合によってはそれが精神疾患や人格障害を引き起こす可能性がある。毒親が毒親と呼ばれるゆえんだ。

 なぜ、親は毒親になってしまうのか。毒親も人であるからには、生まれた時から毒親というわけではない。毒親が毒親になるには、それなりの経緯がある。

 毒親の心理的な特徴として代表的なものに、「自己愛の強さ」が挙げられる。夕が凪の事情よりも、自分の世間体や環境を優先して金銭を要求したように、他者愛よりも自己愛が抜きん出るあたりは、毒親自身が発達段階で自己愛が健全に育っていない可能性がある。例えば、愛情不足であったり、虐待を受けた経験があるなど、毒親もまた健全に育てられていない可能性があるということだ。毒親は、毒親によって育てられたからこそ毒親になり得たのである。

 また、毒親に育てられた、あるいは崩壊家庭で育った経験を持つ大人は総じて“アダルトチルドレン”と定義されるが、前述の斎藤氏によれば、アダルトチルドレンは子どもの頃から親の機嫌を気にする子であったり、誰かの世話を焼こうとする大人びた子であったりすることが多いそうだ。このことから、凪も典型的なアダルトチルドレンであると言える。このアダルトチルドレンがまた、毒親と化してしまう。

 一般的にも、親子間の思考のくせは連鎖しやすい。もちろん例外も存在するが、幼少のころから親によって組み込まれた思考パターンを払拭するという作業は困難を極めるものだ。さらに、毒親と子の関係性は、特に母娘間で形成されることが多いと言われている。共感性や順応性が高いという特徴を持つ女性同士ならではの現象である。

 いずれにせよ、毒親として非難されている夕は、彼女なりに苦難の人生を歩んできたはずだ。そして、女性視聴者から多くの同情や共感を集めている凪は、将来的に夕と同じく毒親になる可能性をはらんでいる。負の連鎖を食い止めるためにどうするべきかは、個々の家庭の事情に応じて考える必要がありそうだ。

文:心理カウンセラー 吉田明日香

参考文献:日立財団Webマガジン「みらい」VOL.2「親子関係の解剖学〜その闇に迫る」
斎藤学「毒親と子どもたち」
https://www.hitachi-zaidan.org/mirai/02/paper/index.html

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