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やくみつるの「シネマ小言主義」 シリアスなのに笑っちゃう、殺し屋コメディー『やっぱり契約破棄していいですか!?』

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提供:週刊実話

 いかにもオリジナル脚本らしい、随所に気の利いたエピソード満載のブラックコメディーです。

 主人公ウィリアムは、売れない小説家。人生に絶望して7回も自殺を試みるものの、ことごとく失敗。ついにプロの殺し屋と1週間以内に自分を殺してもらう契約を結びます。

 その殺し屋レスリーが引退寸前で、ちょっと腕がおぼつかなくなってきているために、事はスムーズには運ばず…。そうこうしているうちにキュートな編集者に恋をしたウィリアムは契約破棄を持ちかけるものの、暗殺件数のノルマ達成を焦るレスリーに命を狙われ続けます。

 登場人物のやりとりが、まるで舞台劇のようにユーモラス。殺し屋のくせに愛妻家でペットがインコだったりと、ディテールの一つ一つが妙にチャーミングです。この映画、付き合いのまだ浅い頃のデートにピッタリじゃないですかね。見終わった後、どのシーンが好きだったかで、たわいなく盛り上がれそうです。

 原題は『1週間以内の死』。これよりも邦題の『やっぱり契約破棄していいですか!?』の方がコメディー感が出て、しっくりします。先日の朝日新聞の夕刊の記事に、最近は本でも商品でも、やたらとタイトルが長くなっているとありました。たとえば、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」とか。これって独特のおかしみが出るのはもちろん、キーワードを数多く盛り込むことで、検索にヒットされやすくなるからだそうです。今どきですね。

 さて、世の東西を問わず、「死」は映画の永遠のテーマ。誰にとっても避けられない死をどう描くかで、どう生きるかを問うことができます。「明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい」はガンジーの名言ですが、1週間と期限を切られると、いきなり「生」が濃く感じられますね。

 自分は締め切りに追われる漫画家として、もう40年近く週単位の生活を続けてきました。テレビのコメンテーターのレギュラーも重なって、厳然とある曜日毎のミッションを必死でこなし続けてきたわけです。

 この週単位のサイクルが、この春に還暦を迎えた頃から、意図せず自然消滅していきました。今じゃ、曜日の感覚があいまいになるほど。漫画の仕事に至っては、前の週には仕上げておくほど。これが60代の働き方なのかと、その心地よさに我が事ながら驚いています。

 この映画の殺し屋レスリーも、ノルマに追いかけられるストレスから解放され、「第2の殺し屋人生」を楽しんで欲しいものです。

画像提供元:(c)2018 GUILD OF ASSASSINS LTD

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■やっぱり契約破棄していいですか!?
監督・脚本/トム・エドモンズ 出演/トム・ウィルキンソン、アナイリン・バーナード、フレイア・メイヴァー、マリオン・ベイリーほか 配給/ショウゲート 8月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー。
■小説家になる夢がかなわず、人生に絶望したウィリアム(アナイリン・バーナード)は、暗殺件数のノルマをこなせず、引退に追い込まれたベテランの殺し屋レスリー(トム・ウィルキンソン)と出会う。7回自殺を試みるも、すべて失敗していたウィリアムは、レスリーに1週間以内に自分を暗殺するよう依頼する。ところがその矢先、出版社勤務のエリー(フレイア・メイヴァー)から電話がきて、小説を出版するチャンスが到来。恋心も芽生え、ようやく生きる希望を見出したウィリアムは、レスリーとの契約破棄を希望するが…。

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やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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