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熱き侍たちが躍動!! メジャーリーグ Times 清宮幸太郎がメジャーのレギュラーになる近道

 今週は番外編として、日本人メジャーリーガーではなく、将来のメジャー入りを熱望している清宮幸太郎にスポットを当てる。これまで浮上した選択肢の中で、現実的にどれがメジャーリーグのレギュラーへの近道か比較検討してみたい。
 あえてこのテーマを掲載することにしたのは、今季限りでメジャーの日本人野手が1人もいなくなり、それが数年続く可能性があるからだ。それだけにメジャーのレギュラーになれる素質を秘めた清宮には、最良の選択をして欲しい。

 これまでに浮上した選択肢は、次の4つだ。
(1)日本のプロ球団入り
(2)早稲田大学進学
(3)メジャー球団と契約
(4)米国の強豪大学に進学

 この中で有り得ない選択は(4)の「米国の強豪大学に進学」である。なぜなら、米国の大学、高校のスポーツ活動はシーズン(秋、冬、春)ごとにやる種目が厳格に決まっているからだ。秋シーズンはフットボール、サッカー。冬はバスケットボール、アイスホッケー、レスリング。春(3〜5月)は野球、陸上競技、テニスとなっていて、日本のように1年中プレーする野球部は存在しないのだ。
 野球チームの選手の中で、身体能力の高い選手はフットボールやバスケットボールと掛け持ちしているケースが多い。将来のプロ入りを目指して野球一本に絞っている選手は、学校の野球シーズンが終わると、個人でサマーリーグに参加してレベルアップを図り、オフシーズンの秋と冬は、親に金を出してもらってベースボールアカデミーなどの野球練習施設に通い、プロ経験のあるコーチ(たいていは元マイナーリーガー)の指導を受けながら練習に励むことになる。これが米国の大学野球選手の実態だ。
 清宮が米国の大学野球に進めば、練習時間は激減し、きめ細かい指導も受けられなくなるのは必至である。
 もう一つ、強豪大学のチームのメンバーになるには、その大学の正式な学生にならないといけない。それにはTOEFLなどの英語能力試験で高得点を取る必要がある。清宮は英語の成績がいいと聞くが、比較的入りやすい州立大学に進むのでも来年8月の入学を目指すには2月まで毎日英語を3、4時間勉強して試験に備えなければならない。これは容易なことではない。

 (3)に挙げた「メジャー球団との契約」も、現実的な選択とは言えない。
 野手の場合、メジャーリーグのスカウトたちは、現時点のホームランの数より将来性を重視するため、まず身体能力を見る。そのため、スピードと敏捷性を併せ持つドミニカやベネズエラの選手は高く評価されるが、完成度は高くても敏捷性とスピードがいまいちの清宮のようなタイプは、いい評価を得られない。
 さらに清宮のように抜群の長打力はあっても、一塁しか守れない選手は敬遠されがちだ。マイナーリーグでは、チーム状況に応じて色々なポジションにつく。一塁手しかできない清宮は、出場機会を減らすことになりかねない。
 しかもメジャーでは、アジアは投手の宝庫だが、野手に人材を欠くというイメージが行き渡っている。清宮がメジャー球団との契約を希望した場合、契約金は20〜30万ドル程度となるだろう。

 なるべく早いメジャー入りを考えた場合、(2)に挙げた「早大進学」も賢明な選択とは言えない。大学を出てから日本のプロ野球に入った場合、海外FA権取得に9年かかるため、メジャー移籍は選手としてのピークがすぎた31歳になってしまうからだ。
 では、大学卒業後、ドラフトを拒否してメジャー球団と契約した場合はどうなるか。清宮の場合、早稲田に進めば、はじめから六大学のスターとして一塁手に固定され、4年間変わることがないと思われる。そのため、卒業後にメジャーを志しても、使い勝手の悪さが敬遠されて高い評価を受けられない可能性が高い。
 ウルトラCとして日米野球で爆発的活躍をした場合、評価が急上昇する可能性はある。しかし、普段接していないメジャー特有の動く速球を短期決戦で打てるようになるとは思えないので、それが現実となる可能性はかなり低いだろう。

 最良の選択は、(1)の早実からまっすぐ「日本のプロ球団入り」という選択だ。
 清宮は高卒でプロ入りすれば、松井秀喜と同じような軌跡をたどる可能性が高い。1、2年目は低レベルな成績に甘んじるだろうが、学習能力が高いので、3、4年目から20本をコンスタントに打てる打者に成長し、5年目以降は毎年30本を期待できる打者になる可能性が高い。ここ数年、メジャーではNPBの打者の評価が地に落ちた感があるが、それでも2年連続30本を打てるレベルの打者は、メジャーでも2割6分、20本を期待できる打者という程度の評価はされる。それゆえ2年800〜3年1500万ドル規模で契約することは可能だろう。NPBの球団に入る際、7年の在籍でメジャー移籍を容認するという密約を交わしておけば、ピーク前の25歳でメジャーにチャレンジできる。
 将来、MLBのレギュラー選手になることを考えるなら、大学に進まずプロ入りするのが一番賢明な選択であるように思える。

スポーツジャーナリスト・友成那智(ともなり・なち)
今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2017」(廣済堂出版)が発売中。

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