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【新日本】ジェリコ、ケニーに敗れるも、故・冬木弘道さんの理不尽魂が爆発!

新日本プロレス『レッスルキングダム12』
▼1月4日 東京ドーム
観衆 34,995人

▼IWGP USヘビー級選手権試合 ノーDQマッチ
○<王者>ケニー・オメガ(34分36秒 片エビ固め)クリス・ジェリコ<挑戦者>●
※イスの上への片翼の天使
※ケニーが4度目の防衛に成功

大会前に東京ドーム周辺を歩いていると、ちょっとした異変に気づいた。明らかにプロレスファンだとわかる外国人が多い。関係者によると、今回はアメリカからの観戦ツアーも組まれているという。ドームのグラウンドに足を踏み入れると、アリーナ席の後方は外国人ファンが占拠している。まさに国際色豊かなリングサイドだ。お目当てはケニー・オメガ対クリス・ジェリコによる“世紀の一戦”であることは言うまでもないだろう。

オープニングの対戦カード発表映像でも盛り上がりが尋常じゃなかった。私は1.4ドームに限って言うなら1992年の1回目から観ているが、観衆6万人を超える発表をしていた“黄金時代”と全く引けを取らない熱量を、今回の大会で感じた。いや、熱量だけなら今のほうが優っているかもしれない。ケニー対ジェリコというドリームマッチは、1990年2月10日に東京ドームで実現したビックバン・ベイダー対スタン・ハンセン(当時の新日本対全日本のトップ外国人対決)、同年4月13日に同じく東京ドームで実現したハルク・ホーガン対スタン・ハンセン(当時のWWE対全日本のトップ対決)のような「ホントにやるの?」と耳を疑うほどビックリしたカードである。

新日本はブシロード体制になってから、積極的に他団体と絡まなくなったこともあり、最近はまた実現していない“夢の日本人対決”が出来つつあるが、機が熟すにはもう少し時間がかかるだろう。そうなると“夢のカード”は今回のようにWWEスーパースターとの対決に限られてくる。現在のジェリコはフリーだが、WWEスマックダウンのホームページからは削除されておらず、ビンス・マクマホン代表にも今回参戦することを話し、理解を得たとコメントしている。このWWEを辞めてるけど辞めてないというどちらにも解釈できる感じがドリームマッチの格を世界規模に押し上げた。

昨年夏のWWE日本公演では、大声援をバックに好ファイトを見せてくれたジェリコだが、今回のケニー戦は完全なるヒールモード。ケニーに残虐な試合を仕掛けることで、会場の空気をケニーのホームに、自身はアウェーへと立場をハッキリさせていた。東京ドームのような大会場でいちばん必要とされることは、わかりやすさである。この辺は17年間WWEのトップとして揉まれてきた経験が自然と生かされているのだろう。用意された凶器を全て破壊させた上でケニーに敗れたジェリコだが、「やっぱメジャーリーガーは違うね」という声が会場から漏れ伝わってきた。

しかし、このメジャーリーガーは日本が育てたメジャーリーガーの一人。その象徴的な場面が今回の試合で見られたので、触れておきたい。それはライオンサルトからケニーを踏みつけ、雄叫びを上げながらマッチョポーズを決めた場面と、ケニーがドラゴンスープレックスの体勢に入るも、ジェリコがサムソンクラッチの要領で切り返してウォールズ・オブ・ジェリコを決めた場面。これはかつてWAR時代に、ジェリコがライオン道のリングネームで、故・冬木弘道さんをボスに、邪道&外道と活動していた冬木軍を意識した動きである。

試合後、少し遅れてインタビュールームに現れたジェリコは、椅子や機材入れなどを投げまくる不機嫌モード。

「オマエら、何が聞きたいんだ? 聞けよ、何でも答えてやるから!」

と言いながら代表質問を続けようとすると…

「一人1問だ! 誰か他の記者が質問しろ! 欲張るな!」と怒鳴る始末。報道陣が萎縮する中、私は意を決して一連の冬木さんムーブメントについて質問した。

すると、ジェリコは口調が穏やかになり、「冬木は真の日本の戦士だからだ。彼こそ天才であり、プレスやファンのことを気にせず自分のことだけをやり遂げた人だった。彼を尊敬しているし、その思いからアレをやったんだ」と冬木さんへの思いから出た行為であることを認めた。その直後に「お前のことは尊敬してないけどな」と悪いジェリコに戻っていたが、ずっとプロレスを見続けているファンにとっては、涙なしでは語れない話である。

最後に、いつでもWWEに戻れるジェリコに今後について質問が飛んだ。

「それはオマエには関係ない。ノーコメントだ。きょう、この試合がレッスルキングダム史上最高の試合だったはずだ。ものすごく計算されていて、観客もエキサイトしていて、バズりまくった。そして、これが新日本プロレスを次のレベルに押し上げたことだろう。ブレイクスルーになったはずだ。それを、ケニー・オメガとクリス・ジェリコが、アルファ対オメガが実現させたんだ。今日、負けはしたが自分自身のパフォーマンスに恥ずべき点は一切なかった。誇らしく思うし、俺たちは素晴らしい試合を見せられたと思う。そして、新日本プロレスを世界的に次のレベルに押し上げたことをすごく誇りに思っている。観客動員数もこれまでにない大きな数字を叩き出したと聞いている。それも、アルファ対オメガがレッスルキングダム12で実現したからだと思う。しかし、今日の試合に負け、日本のファンのリアクションを見て、明日、日本を発って、もう二度と戻っては来ないだろう」

ジェリコは席を立つと、インタビュールームのイスを蹴り上げながら引き上げて行った。この試合は大会前にジェリコに名前を挙げられた棚橋弘至も「(インタビュー中だったため)この試合は注目しているので、早く戻って見たい」と語り、飯伏幸太も「しっかり生で観ます」と話していた。「もう戻って来ない」発言は、理不尽大王だった冬木さんイズムであると信じたい。ジャパニーズスタイルを理解している2人による素晴らしいカナディアンかつアメリカンレスリングだった。

取材・文 / どら増田
カメラ / 萩原孝弘

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