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北朝鮮の暴走に頭抱える 旅行・運輸業界

 ミサイル発射や水爆実験など、北朝鮮による暴挙はエスカレートするばかり。その影響が、いよいよ日本国内の各企業、とりわけ旅行・運輸業界に飛び火し始めている。
 顕著な影響が出ているのは米領グアム関連だ。金正恩朝鮮労働党委員長が「ミサイルターゲットは米軍基地のある米グアム沖合」と宣言したためだ。
 「グアムへの観光客は、年間170万人のうち半数から6割が日本人。コスト面や安全面、さらに日本から3時間半近くで到着できる距離にあり、現地の人たちも極めて親日的だからです。そのため、ここ数年は反日的な韓国や中国から、グアムに切り替える旅行者が続出していたのです」

 ところが正恩委員長の宣言後、8月29日に北海道上空を北のミサイルが通過し、北日本、北関東一帯にJアラートが鳴り響くと、事態は一気に深刻度を増した。
 「専門家の間で、いままで張子の虎と思われていた北朝鮮ミサイルが破壊力と精度を増し、米中ロ並みの性能を持つのではと見られ始め、9月3日には水爆実験を行った。これでアメリカの先制攻撃の可能性も出てきたことから、日本国内の危機意識が一気に高まり始めたのです」

 そんな中、グアムや韓国への修学旅行を中止する学校が相次いだ。グアムについては、NHKによる調べで分かっているだけでも11都道府県で18の学校がキャンセル(9月4日現在)。内訳は高校が14校、中等教育学校が1校、中学校が3校だ。韓国についても、すでに長崎県の2つの高校が中止を決定しているという。
 「保護者会を開き親御さんたちに問えば、ほぼ大半は“中止”に賛成する状況。グアムだけでも最終的には20校以上が取りやめるのではないか」(教職員関係者)
 そのため、旅行業界では代替え策を模索せざるを得ないなど大混乱。この流れは、さらに拡大しそうなのだ。

 修学旅行だけではない。国内旅行業界で、今年後半から年末年始にかけての需要の減退や、予期できない被害などへの懸念が強まるという。
 国内大手のJTB広報担当者が言う。
 「今のところグアム方面の企画は、売り出せば人気は高く顕著な影響はありません。北朝鮮動向は注意深く情報収集していくしかありません」

 近畿日本ツーリストの広報担当者も、以下の通り同様だ。
 「グアムは顕著な影響はありません。これからのことは、その都度、最新の情報を収集して対応していくしかありません」

 2社とも「当面、大きな影響はない」と平静を装うが、旅行業界関係者は内部の混乱ぶりをこう明かす。
 「大手航空会社などによれば、北朝鮮がグアムへの弾道ミサイル発射計画を発表してからは、旧盆中心にグアム便の旅客数が前年同期に比べ3%減だったという。予約していても出発を延期したり様子見の客が増えているのです。水爆実験後はさらに緊迫しているので、今後は予定変更する客や旅行そのものを手控える客の急増は必至。業界関係者は先が読めないと頭を抱えています」

 さらに、警告もなく見境なしに日本上空に発射されるミサイルに、航空機や船舶がどう対応するのかも問題だ。
 航空会社関係者が言う。
 「ミサイルの動向は、アメリカの衛星で発射のタイミングも向きも、ほぼ事前にキャッチできます。そのため、上空での衝突という最悪の事態は避けられると思いますが、破片の落下は予測不可能。そうなった場合、かなりの飛行制限が出され、乗客も心理的に圧迫を受けるため、ダメージをかなり受ける」

 一方、日本経済の他への影響はどうか。
 水爆実験直後の株価は一時、防衛機器を製造する石川製作所が5.7%高、火器メーカーの豊和工業が1.5%高、防毒・防塵マスクの重松製作所が0.5%高など戦争銘柄が急騰したが、他の大半の銘柄は下落しており、その後も低下の一途をたどっている。北朝鮮危機が長引けば、平均1万9000円を切る気配だ。

 経済アナリストはこう指摘する。
 「今はまだグアムがどうなるかという程度ですが、これから先、頻繁に北朝鮮ミサイルが日本上空を飛び交えばどうなるか。しかも、破壊力が増加する上に、細菌ミサイルや米軍ハイテク軍備網を無力化させる電磁パルス攻撃も可能という話まで出てきている。戦争にならなくても、日本上空のミサイル飛来が常態化した場合は、2000万人を超える日本への外国観光客の足も遠のくとさえ言われ、もちろん、'20年の東京五輪開催も危うくなりかねません」

 北朝鮮の暴走で、日本経済はリーマンショック以上の大打撃を被るかもしれない。

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