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【不朽の名作】「貞子vs伽椰子」に行く前に一度チェックしてみては? 「リング」

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パッケージ画像です。

 本日18日(土)より、日本版『フレディVSジェイソン』とも言えるかもしれない、邦画ホラーの二大巨塔の貞子と伽椰子が相まみえる、『貞子vs伽椰子』の放映が開始される。という訳で今回は、貞子が銀幕デビューを果たし、ブームを起こした1998年公開の『リング』を紹介する。

 本作は、鈴木光司の同名小説を原作とする作品だが、キャラクターなどの細かい設定は大きく変わっている。久々に内容を確認すると、いきなり冒頭で死ぬ女子学生役が、竹内結子だったりして今観ると別の意味でビックリ。ちなみに、この冒頭シーン、ホラー映画のお手本のような構成となっており、恐怖をあおりながら、一度別の事象で外し、安心したところを襲われるという、三宅隆太監督が言うところの「なんだ猫か…」的な定番演出がある。さりげなく夜遊びに興じる、いけない学生たちを絶望的な脅威が制裁を加えるという構図にもなっており、これも国内外問わず、定番中の定番。つかみはバッチリだ。

 「ビデオを見た者は7日後に死ぬ」という設定で、恐怖シーン満載かと思うとそこまで多くないのがこの作品の特徴だ。そもそも原作が、複雑な謎を解いていくミステリー小説なので、映画でも、どちらかと言うと、浅川玲子(松嶋菜々子)と元夫である高山竜司(真田広之)が自身と息子が見てしまったビデオの呪いを解くために、呪いの元凶である山村貞子の謎に近づいていくというミステリー要素が強めとなっている。怖いというよりは全体的に、BGMも含めジメッとした感じで、気味が悪く、怪談話を聞くような、薄ら寒い味わいがある。

 未見で、怖い思いをしたくない人のために恐怖シーンをネタバレするとしたら、おそらく冒頭のシーンと、玲子がビデオを見た後に鳴った電話を取るシーン。あとはビデオの真相を探るために伊豆大島を訪れた際に玲子が貞子の念のようなものに腕を掴まれるシーンあたりが要注意だろうか。人を驚かせるという一点ならば、1995年公開の『学校の怪談』とかの方が回数多めかもしれない。この作品は「怖い」というより、「展開が面白い」という表現の方が合うだろう。

 竜司には触った相手の思考を読み取る超能力的なものもあり、若干ファンタジーっぽい部分もあり、段々と謎が明らかになっていく部分には、結構ワクワクするかもしれない。他にも、ビデオに隠されたヒントを元に、方言や当時の新聞情報、三原山の噴火ニュースなどを探り、伊豆大島に主人公達が引きこまれていく場面もテンポがかなり良い。あと、VHSとアナログテレビという組み合わせも、この作品の気味の悪さを強調するのに一役買っている。やっぱり画面に砂嵐とか、アナログ特有の画像の乱れが出ないとあの雰囲気は出ないだろう。デジタル全盛の『貞子vs伽椰子』ではどんな方法でそのあたり補うのだろうか…。お祭り作品だから、あえて気にしないという方法もあるが。

 邦画のホラー映画というと、とにかく恐怖描写ばかりを重視して、シナリオがどっかいってしまう作品などが多い。それが、邦画のホラーがチープだというイメージになっていたが、この作品ではかなりシナリオがしっかりしている。そのおかげで、恐怖に隠れた笑いどころなどを探さなくても、そのまますんなり観れてしまう。それが良いか悪いかは別としてだが。おそらくホラーがすごく好きな人の場合は肩透かしをくらう部分もある程度あるかもしれない。

 高校生の間で広まる都市伝説、黒髪の女の呪い、幽霊からの無言電話、○日後に不幸が襲うという不幸の手紙的な要素、心霊写真。この作品の物語を形成している、ネタの数々は、当時かやや昔に流行っていた、怪談から来ているものが多い。冷静に考えてみると、当時ですら手垢のついた、ベタなネタばかりなのだが、それでも当時新鮮さや、恐怖を感じた人が多いのは、映像的な演出が上手く行っている証拠だろう。呪い発動までの時間が、どんどん迫っていく危機感がこれでもかと伝わってくるのだ。まあ、問題解決を竜司のオカルト能力に頼りすぎとか、貞子が落とされたとされる井戸のある場所で、大騒ぎしすぎとか、ツッコミ所もない訳ではないが。

 ちなみに、この作品に登場する貞子の母親・山村志津子は実在の人物をモデルとしている。それが千里眼事件などで知られる御船千鶴子だ。明治末に千鶴子は千里眼・念写を科学的に実証しようと、一部学者と協力して、実験を公開するが、結局手品だとされ、千鶴子のその後は悲劇的な結果となる。この千鶴子という人物、同作の他にも、ドラマ『トリック』や京極夏彦著の『魍魎の匣』、またアニメ化もしたマンガ『琴浦さん』などの作品にも、ネタとして使われているので、知っておくとより作品を楽しめるかもしれない。

 また、ミステリー作品には欠かせない最後のどんでん返しも、この作品ではかなり上手く機能している。わざわざ古井戸に潜って、貞子の遺骨を探し出し、供養してめでたしめでたしとなるところ、強烈なハシゴ外しが待っている。さらに、玲子があることに気づいて、その後にした決断は、それこそゾッとするオチだ。

 なお、本作の一番有名なシーンと言っていい、貞子がテレビ画面から飛び出してくる部分は、現在ではそれほど感動はないかも。その後、様々な映像作品やコントネタでパロディ化されている影響なのか、もはやギャグシーンにしか見えない。当時は凄く衝撃的だったはずなのだが…。しかし、貞子のキャラとしての強烈さは現在でも色あせることはないだろう。髪で顔を隠し、真っ白なワンピース姿で、井戸から這い上がるシーンは今でも衝撃のワンシーンのはず。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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