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コンピューターゲームの20世紀 第9回…『弟切草』

<そもそもゲームタイトルが恐ろしい>
 かつて日本のAVGは前回紹介した『メタルスレイダーグローリー』のようなコマンド選択方式が主流であったが、本作『弟切草』の登場により状況は一変する。
 初の「サウンドノベル」作品となった本作。テキストを読み進めているうちに分岐点が出現し、その都度自分で好きなものを選択する。選んだ選択肢によってその後の展開が変化し、それを何度か繰り返すことでエンディングに到達。これがサウンドノベルの大まかな流れである。従って、小説というよりはひと昔前に流行ったゲームブックに近い。また、マルチエンディング方式を採用している点が従来のAVGとは決定的に異なり、プレイを重ねることで新たな選択肢やシナリオが出現する。しかもその数が膨大。1度クリアしたら終わりという、コマンド選択方式AVGの弱点を見事に払拭してみせたわけだ。
 さらにはリアルなサウンドとグラフィックが用意されている点も特徴の1つで、弟切草プレイ時に女性の笑い声が背後から聞こえてきた時は、1人でトイレに行くのがはばかられたほど。これだけは何度プレイしても慣れなかったものである。

<チュンソフト製のサウンドノベルは信頼度が高いものの…>
 本作は初のサウンドノベル作品ということでシステム的に未完成な部分が多く、毎回スタート地点からのやり直しを強いられるのは、周回プレイを前提としているゲームとしては非常に辛い仕様。テキスト速度が遅いのも周回プレイをためらわせる原因の1つであるように思う。
 しかし、それらは微々たる問題だ。そんなことよりも、時々生じるストーリーの矛盾はなんとかならなかったのだろうか。「中華料理店に入ったはずなのにメニューは牛丼しかなく、注文したら何故か寿司が出てきた」。こんな具合である。場合によっては張られた(はずの)伏線が意味をなさないことすらあるのだから困ってしまう。これが、後の『かまいたちの夜』や『街』とは決定的に異なる点だ。従って、かまいたちの夜のように「このエンディングを目指してみよう」と思ってプレイするのではなく、本当に小説を読むような感じで気負わずに楽しむといい。ホラータッチの作品が苦手な方や、事件の解決の過程を楽しみたいという方には前述の作品がオススメだ。特に、街については個人的にサウンドノベル最高傑作だと思うのだが、かまいたちほどメジャーではなかったりするのが残念でならない。
 話を元に戻そう。AVGは90年代初頭には絶滅寸前にまで追いやられたものの、弟切草の登場により一時的にだがブームを迎える。ゲームの評価は分かれると思うが、弟切草の功績は後世にまで伝えられるべきであろう。ただし、比較的簡単に製作できてしまうためか、サウンドノベル方式のAVGには駄作が多いのも事実であり、特に、ブームの間は玉石混淆どころか大半がゴミという惨状。チュンソフト以外の作品に手を出すことはかなりの“賭け”でもあった。もっとも、チュンソフト“純正”作品についても、かまいたちの夜の続編はイマイチだったわけだが…。
 アダルト作品が圧倒的に多いものの、現在に至るも同形式を採用したゲームは発売され続けており、もはやAVGという枠を超え、1つのジャンルとして定着した感があるサウンドノベル。今後は3D対応の作品が発売されることも予想される。(内田@ゲイム脳)

(C)1992 CHUNSOFT/長坂秀佳

DATA
発売日…1992年3月7日
メーカー…チュンソフト
ジャンル…AVG(サウンドノベル)
ハード…スーパーファミコン

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