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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 どうなる石油価格

 資源エネルギー庁が発表した、11月20日時点のガソリン価格は、前週よりも1円80銭円高の140円10銭となった。10週連続の値上がりで、およそ2年3カ月ぶりの高値となっている。
 為替がやや円安の水準で安定していることに加え、OPEC(石油輸出国機構)が減産を継続する見方が強まっていることが、原油価格高騰の背景になっているのだが、もう一つ重要な要因が、中東地域での政情不安が拡大していることにある。
 石油の価格は、ニューヨークのマーカンタイル取引所で行われている石油の先物取引価格を基準に決まっている。マーカンタイル取引所の取引は、大部分が実需ではなく、投機となっているから、石油の最大の供給地である中東の政情の不安さが、価格高騰に結び付きやすいのだ。

 第一の中東不安は、サウジアラビアだ。サウジアラビアは西側の同盟国なので、民主国家と思われがちだがそうではない。初代アブドルアジズ国王の後、初代の王子たちが次々に国王に就任し、現在が7代目のサルマン国王になっている。絶対権力者が世襲されているのだ。
 しかし、兄弟で国王を受け継ぐという方式に、変化がもたらされようとしている。サルマン国王が息子のムハンマド皇太子に国王を禅譲しようとしているのだ。
 初代国王には52人の息子がいて、そのうち36人が王位継承権を持っている。当然、まだ国王になっていない王子たちは、国王の座を第三世代に移すことに賛成しない。そこで、ムハンマド皇太子が政敵である王子たちを、汚職を理由に次々に逮捕させているのだ。これまで石油を安定供給してきたサウジの政情が混乱する可能性を、投機家たちは、むしろ囃し立てている。

 もう一つの中東不安は、イランにある。サルマン国王とムハンマド皇太子は、中東の盟主争いをするイランを敵視している。そこに、トランプ発言が重なってしまった。
 トランプ大統領は10月13日のホワイトハウスでの演説で、米国など主要6カ国と結んだ核合意を、イランが順守しているとは「認めない」と発言したのだ。これに対し、イランが猛反発し、両国の緊張関係が高まったのだ。

 ただ、石油価格の高騰が今後も続くのかどうかについては、見方が分かれる。焦点は、米国がどれだけ輸出を増やしてくるかだ。米国は、平時は石油の輸入が輸出を上回っているが、シェールオイル生産で積み上げた在庫を吐き出せば、短期的には輸出超過が十分可能だ。米国のシェールオイルの生産コストは、1バレル40ドル程度と言われているから、いまの60ドル程度の相場で売れば、大儲けができる。
 もちろん、トランプ大統領がそれを狙って、中東危機を煽っているとは断言できないが、北朝鮮問題でも、危機を煽ることで、日本や韓国に米国製の兵器を大量に買わせることに成功した。だから、中東危機が、米国の利益になることを知っている可能性は、十分あるのではないだろうか。

 ただ、石油価格の高騰は、ガソリンや灯油だけでなく、電気代から、農産物、水産物の価格にまで波及するので、今後の中東情勢の行方には、十分な注意が必要だろう。

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