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書評「野武士のグルメ」久住昌之著、晋遊舎

 知らないメシ屋の引き戸を力まかせに開け、「オヤジ、飯だ」と吠える「野武士」のような態度に憧れる著者。しかし現実はそうはいかない。何気なく入った飲食店でのささいな出来事を書いたエッセイで、肩ひじ張らずさらりと読める。

 一般的なグルメ本のように店名や味、メニューの紹介が中心ではなく、店の風情、店員や他の客との触れ合いに重きを置いている。「野武士」的な態度を取ることができずに落ち込む心情、食事中の心理描写などが細かく描かれているのが楽しい。

 当然ながら満足して帰ることもあれば、後悔して帰ることも。著者が満足すると、思わずこっちまで幸せな気分になってしまうから不思議だ。
 「食」は「味」だけで満足できるわけではないことを本書は教えてくれる。巷にあふれる「おいしい」「まずい」を問うだけのグルメ本にうんざりとしている方にはオススメだ。(税別1000円)

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