現在の酒税額は1缶(350ミリリットル)当たり、ビール77円、発泡酒47円、第3のビール28円。その分、小売価格はビールが高く、発泡酒、第3のビールの順に安くなる。これを政府は「税の公平化」を理由に、55円程度で統一する計画だ。
ところが、消費税10%引き上げが先送りされたこともあって、政府・与党では「税の公平化」をチューハイやハイボールにも適用すべきとの声が強まってきた。どちらも酒税額は第3のビールと同じ350ミリリットル当たり28円。これを一気に55円まで引き上げれば「消費者離れを考慮しても約400億円の税収増が見込める」との試算さえある。
標的はワインにも及ぶ。税額は1リットル当たり80円。対して日本酒は120円と割高のため、ビール類の税額見直しに併せて日本酒と同額にする案が浮上している。
こうした動きに業界関係者は「スンナリ行くわけがない」と冷ややかだ。ビール類の市場は10年連続で前年実績を下回っており、今年1〜6月の出荷量はピーク時に比べ25%も減少している。そこへ税制改正の荒療治を断行すれば、消費者はもちろん関係業界がそろって「政府に弓を引く」というのだ。
「ビール会社は消費者のビール離れが進んでいることに危機感を募らせ、チューハイやハイボールを“次の柱”と位置付けている。割安感から女性や若者に受けているからです。それが税制改正のターゲットとなれば、ファン層が逃げ出す。かといって、割安感が出るビールに殺到する保証はない。税額を55円に一本化したら業界の地盤沈下が急加速します」
無能な政治家や暇を持て余す役人の整理もせず、取りやすいところから取ってばかりの政府。庶民の怒りは爆発寸前だ。