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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 どう考えても憲法違反

 自衛隊の海外での武力行使を可能にするための安全保障関連2法案の国会審議が始まった。安倍総理は、今回の安全保障関連法案は、総選挙で国民に明示した安全保障強化策の具体化であり、自民党はその選挙で圧勝したのだから国民の信を得ていると主張している。
 しかし、昨年の総選挙の争点は、消費税の引き上げ延期を含むアベノミクス全体の評価だった。また自民党の選挙公約には、「日米同盟強化を進めるとともに、アジア太平洋地域における同盟の抑止力を高めるため、『日米防衛協力のための指針』(ガイドライン)を見直しつつ、同盟国・友好国との防衛協力を推進します」と書かれているだけだ。解釈改憲によって集団的自衛権を行使するとは言っていないのだ。

 また、一番の問題は、今回の安全保障関連法案が日本国憲法に抵触するということだ。改憲派である憲法学者の小林節慶應義塾大学名誉教授は、「現行の憲法9条2項が、軍隊と交戦権を禁じている以上、日本は海外で軍事活動できないと決まっている。これをやぶって海外で軍事活動を行うならば、堂々と国民に問うて、憲法改正をしてから行けばいいのに、その議論が吹っ飛ぶのはおかしい。違憲状態のままで話が進んでいる」と指摘している。
 安倍総理は、後方支援だから自衛隊が戦争をするのではないと、繰り返し主張しているが、前線に立とうが後方支援だろうが、戦争に参加することに変わりはない。軍事評論家の中には、後方支援こそ最も重要な役割だと指摘する人もいる。現に太平洋戦争の際、南方戦線で日本軍が敗れた最大の原因は、補給が絶たれたことだった。

 そして、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏は5月15日の緊急記者会見でこう語っている。
 「日本の武器使用権限は、軍隊ではないし武力行動ではありません。したがって合理的に必要と認められる限度、被害が許容できるのは、いわゆる警察比例の原則で武器使用をすることになります。そうなると、相手を殺害してしまった場合はどうなるでしょう。(中略)『軍隊の行為だから』ということで、それだけで違法性を阻却しようとすれば、憲法が認めない軍隊による行為、ということになる。
 憲法に従っていちいち武装戦力と交戦したことが国内法の殺人罪として検討される、少なくとも検察の段階で容疑が掛かることになれば、どのような撃ち方をしたか、撃つ前にどれだけ声を掛けて警告したか、ということが問われてきます。それは現場の部隊にとってはたまりません。警告の声など掛けていたら先に撃たれます。そういった、憲法のもとで軍隊がないはずであることとの矛盾がまったく考えられていない。極端に言えば、こういうことをやりたいのであれば憲法を改正して軍隊を持って行わなければ、海外での武器使用は不可能だと私は考えます」

 集団的自衛権の行使によって自衛隊員が命を落とすことは、もちろん大きな問題だが、より大きな問題は自衛隊員が非戦闘員の市民を巻き添えにすることだ。その場合、自衛隊員が殺人罪に問われる可能性がある。
 だから、どうしても海外で武力行使をしたいのであれば、まず憲法改正の手続きから始めないと、おかしなことになってしまうのだ。

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