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日本球界は大恐慌時代を乗り越えられるのか? NPB財政破綻差し替え(下)

 「日本シリーズはまだ商品価値があるからいいが、オールスターの場合は今の方式ではもう無理だろう。韓国のオールスターチームも呼んで、日韓オールスターを開催するなど、斬新な企画、内容にしないとどうにもならない」。12球団の代表がメンバーになっている実行委員会でこういう声が上がり、従来のオールスター廃止、新たな方式を模索している。が、インパクトのある案など簡単に出てくるわけがない。日韓オールスター対決と言っても、ファンがどこまで関心を持つか疑問だ。現に長崎で開催された、今年休止のアジアシリーズに代わる日韓クラブチームチャンピオンシップには、1万4000人の観衆しか集まらなかった。7年ぶりの日本一になった巨人が出場してこの惨状だ。「テレビの放映権収入などあり、トータルすれば730万円の黒字になった。大健闘でしょう」とNPB関係者は言うが、胸を張れる結果ではない。オールスターの代案といっても従来のセ、パ対抗をやめ、かつて行われていた東西対抗を復活させるなどの案がせいぜいだろう。

 オールスターが存続の危機、日本シリーズにも難題山積と、NPBの二大財源に危険信号が点滅しているのに、いまだにセ、パの足並みが乱れている。今年からコミッショナー事務局、セ・リーグ連盟、パ・リーグ連盟の3局をコミッショナー事務局1局に統合した成果が表れていない。セ、パの会長職を廃止しただけで、2人分の合計年俸4800万円が削減できた。東京・千代田区内幸町のコミッショナー事務局の他に、東京・銀座の同じビルにそれぞれあったセ、パの連盟事務所も閉鎖、記録部だけが狭いスペースで1か所借り、銀座分室になった。セ、パ連盟事務所の家賃は月に100万円といわれているから、年間、1200万円の節約になる。ムダな経費の削減は着々と行われているのだが、セ・リーグ部とパ・リーグ部が一体になって何かやろうという意識がない。依然として変なライバル意識を燃やしている。
 その最たるものが、クライマックス・シリーズ(CS)だろう。パ・リーグが一足先に04年からプレーオフとして実施。「プレーオフは大成功したんだから、セ・リーグも変なメンツにとらわれずに、やればいいんだ」とソフトバンク・王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)が明言したように、経営の苦しくなったセ・リーグ球団も背に腹を代えられずに07年からCSを導入した。が、スポンサー探しはそれぞれ勝手にやっている。今年の例でいえば、パ・リーグのCSに「クリック証券」が冠スポンサーになっている。対して、セ・リーグの方は「セブン&アイホールディング」が冠スポンサーでなく、協賛企業だ。
 「スポンサーが付けばどういう企業でもいいというわけではない。それなりの企業でなければ、リーグとしてのステイタスがある」というのが、セ・リーグ側の考え方だという。「DH制度」「予告先発」など、パ・リーグが導入した制度には背を向けるセ・リーグのプライドだ。かつては「人気のセ、実力のパ」といわれたように、興行的にはセ・リーグの一人勝ち。パ・リーグは常にリーグ存続の危機に立たされていた。

 パ・リーグが交流試合の実現を訴え続けたのも、「巨人と試合をやれば、お客さんは来るし、1試合1億円以上のテレビマネーが入る」という計算からだった。それだけに、セ・リーグには「ウチがメジャーリーグでパ・リーグはマイナーリーグのようなもの」という見下ろした姿勢がある。それだけに、ポトシーズンゲームの導入でパ・リーグに後れを取ったバツの悪さもあるのだろう。
 足並みの揃わないCSのスポンサー問題。元NPB関係者はこう嘆いている。「セ、パが一緒になって同じスポンサーを付けるようにすれば、大手企業を冠スポンサーにすることも可能になるのに。セ、パ交流戦に日本生命がスポンサーになってくれているようにね。実行委員会で何度もそう言っているのに、セ、パともに耳を貸そうとしないんだから、嫌になるよ」と。
 冠スポンサー問題に止まらない。NPBの財政危機を乗り切るためには、CSを日本シリーズ同様に、NPB主催にするのがベストな方策だ。ところが、「NPBが新たな資金作りをするために、いろいろな新規事業を考えるのは当然だ」と12球団は言いながらも、「12球団の既得権は侵さないこと」という、虫の良い条件を付けているのだ。12球団の既得権を侵さないで新しい金儲けなどできるはずがない。パ・リーグだけがプレーオフを実施していた時代はともかく、両リーグで開催しているCSは、日本シリーズ出場権を決める試合なのだから、NPBが主催するのはむしろ当然だろう。
 それなのに、12球団は目先の利益ばかりしか考えない。第1ステージの収益が2位チームに、第2ステージの分は1位チームに入る、おいしい現行のシステムを手放そうとしないのだ。「事の是非はともかくとして、セ・リーグにナベツネさん(巨人・渡辺恒雄球団会長)、パ・リーグには堤さん(義明氏=西武前オーナー)がいた時代のオーナー会議が懐かしい。堤さんはオーナー会議そのものにはほとんど出てこなかったが、2人の実力派オーナーが意見の一致を見れば、物事はどんどん決まっていったからね。FA制度の導入、ドラフトの逆指名などその典型だ」。セ、パのリーダーシップを握る実力派オーナー不在も、セ、パの足並みの乱れにつながり、NPBの財政破綻に拍車を掛けている。
(了)

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