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選挙のたびに儲ける! 政治団体ニセ政治献金不正還付の手口

 先の衆院選で民主党の大躍進による政権交代が実現したばかりだが、来年の参院選に向けた戦いはもう始まっている。ところで、選挙のたびに政治献金で儲ける秘密の手口があることをご存知だろうか? 長らく不透明とされてきた「政治と金」をめぐる問題。これを知れば、あなたも次期選挙で一儲けできる!?

 民主党政権下で注目されるのは、国民の暮らしがどう変わっていくのかばかりではない。先の総選挙で争点の一つになったのが、民主党の小沢一郎幹事長に対する西松建設の不正政治献金疑惑だ。現行の政治資金規正法は企業・団体からの政治献金を厳しく制限、そこで西松建設はダミーの政治団体を通して法規制をかいくぐる献金をしたのではないかとされた。
 本来受け取ることのできない政治献金の受領と政治資金収支報告書への不実記載、これは民主党に限らず、自民党政権時代から「政治と金」をめぐる永遠の問題点であった。
 ところで、選挙があるたびにこの政治献金を舞台に儲ける人々がいる。その手口とは寄付金控除制度を悪用した所得税の不正還付だ。
 所得税法及び租税特別措置法によれば、公共性の高い寄付をした者に一定の限度で寄付金を所得から控除する制度があるが、実は、一定の政治団体への献金も寄付金控除の対象となっているのだ。サラリーマンであれば税金は源泉徴収により既に納められているので、寄付金控除後の所得を基に再計算して税金が過払いになっていればその払い過ぎた税金を還付してもらうことができる。政治献金を舞台に儲ける人はこの制度を悪用、架空寄付で国からお金をパクるのである。「政治献金」というと難しそうに思われるかもしれないが、実はそうでもない。この手口を使うためには、まず「政治団体」が必要だが、「政治団体」は、都道府県選挙管理委員会に「政治団体設立届」と団体の規約を提出するだけで設立できる。株式会社やNPO法人の設立よりよほど簡単なのだ。
 ただし、寄付金控除の対象団体となるためには、いくつか条件がある。その中で最もハードルが低いのが政令市の市議選以上に出馬する候補者を推薦する団体となることだ。具体的には「○○後援会」「○○君を議会に送る会」を作り、出馬予定の候補者から「貴団体の推薦を受けている」旨の「被推薦書」を書いてもらえばいい。これでその候補者が選挙に出馬した年とその前年の寄付金が控除対象となる。
 むろん、確定申告時には確かに寄付をしたとの証明が必要。そこで、政治団体側では寄付を受けるたびに政治資金収支報告書に逐一記載しておき、寄付者側は選挙管理委員会がその収支報告書と突き合わせて発行する「寄付金控除のための書類」を取得すればよい。収支報告書に記載がない違法な献金は控除対象として認められないためだ。

 すると、現実には一銭も寄付していないのに収支報告書上は多額の寄付をしたことにしておけば、その旨の証明書を入手できることになる。個人が寄付できる上限額は年間1団体につき150万円、一方、寄付金控除の上限額は当年の所得の40%であるから、例えば年収600万円程度の人が150万円のニセ寄付をしたことにして還付申告すると概算で約24万円還付される。
 なお、実際に受け取ってもいない献金をもらったことにした団体側に不利益はないのかと思われるかもしれないが、その点は全く問題ない。政治団体が政治活動のために受けた寄付には税金がかからないためだ。実際には、政治資金収支報告書に名前を出したくない団体や個人のダミーとして、あるいは、禁止されている政治献金を受け取った際に帳尻を合わせる目的で、支援者個人の名義を借りることが行われている。
 むろん、こうした不正還付は所得税法違反である。しかし、明らかに不自然な金額でない限り極めて発覚しにくく、受け取った献金を「もらっていない」ことにする場合と違い追及されずに終わるのが実情のようだ。

◎右翼団体も
 政治団体には、政党や政治家の後援会以外にも実にさまざまな団体がある。例えば医師会や歯科医師会の有志が設立した「○○政治連盟」といったものがその代表例で、政治団体として届け出ておけば合法的に政治献金が可能となる。
 意外なところでは「政治結社○○」といった右翼団体も多くは政治団体として届出をしている。政治団体の届出をしただけでは法人になれるわけでもないのだが、「我々はきちんと届出を済ませ、公明正大に活動している」とアピールするためなのか。
 なお、たとえ右翼団体であっても政治団体となった以上は毎年政治資金収支報告書を提出する義務が生じる。もし2年連続して提出しない場合、その団体は「不活動団体」となり政治活動のために寄付を受け、または支出することが禁止される。
 この規定を知らないと思わぬところで足をすくわれることもあり、警察の公安部がこの規定を根拠に不活動団体となっていた右翼団体を違法に「賛助金」を受け取った容疑で摘発したケースがある。

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