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性犯罪者にGPS

 2010年の強制わいせつ事件認知件数が全国最悪となってしまった大阪府が、性犯罪の前歴者らにGPS端末の携帯を義務づける条例制定を検討している。

 この条例はすでに宮城県が検討をはじめているが、何かと論議を呼んでいるようだ。

 性犯罪の特徴として、被害者が恥ずかしさや復讐を恐れて訴えでないことが少なくないことや、訴えた後での調査や法廷などで、再びつらい思いをすることなどから、訴えをしないことも多く、正確な数字がでないということがある。

 そういった中ではあるが、再犯が多いと思われている性犯罪だが、他の凶悪犯罪に比べて、決して再犯率が高いとはいえない。
 再犯率が高くもないのに、性犯罪者のみにGPSを付けるということの裏には何があるかというと

 「性犯罪被害者の恐怖や心の傷等を思いやってのこと」
 という答えが出てくる。

 しかしそれだけだと、殺人や放火、強盗といった他の凶悪(重大)犯罪被害者の恐怖や心の傷はどうでもいいのかということになる。

 当たり前だが、殺人未遂の被害者や殺人被害者遺族にも、恐怖や悲しみ、心の傷は残る。放火や強盗の被害者にも残る。

 そういった被害者の方々のことを考えれば、犯罪加害者にGPSを付けるのは性犯罪者のみということでは済まなくなってくる。

 また、再犯率の高い犯罪といえば、窃盗や覚せい剤といったものがあるが、これらの犯罪者にもGPSを付けるべきなのか? という議論も生まれよう。
 
 「犯罪者の人権など考える必要なない。被害者の人権を第一に考えよう」

 という言葉もよく聞かれる。
 一見、ごもっともな意見なのだが、この意見が暴走すると、犯罪者とされた人々は、皆GPSにより国家権力に管理されてしまうという事態になりかねない。
 
 これはこれで恐ろしいことではないだろうか?
 いまや親という権力者は、我が子という被支配者に対してGPS端末のついた携帯電話を所持させて管理している。
 鉄道会社では、子どもが改札を通れば、それが自動的に保護者に「いま改札を通過しました」と、報告するサービスも行なわれているという。
 親は安心なのであろうが、これは本当にいいことなのかどうかと疑問になることもある。

 話を元にもどそう。大阪府や宮城県が検討しているのは、性犯罪に限ったことなのだ。性犯罪というものが、殺人や放火以上に、人間の心の琴線に触れ、感情的になるからこそ、このような検討が行なわれているのだろう。

 この性犯罪者への制裁にかんしては、普段冷静な人でさえ、「ちょん切ってしまえばいい」などと、感情的になりがちなのだ。
 だからこそかえって冷静になりつつ検討が必要なのではないだろうか?

巨椋修(おぐらおさむ)(山口敏太郎事務所)

山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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