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ニューヨークレポート 怪しげなタレント事務所

 ニューヨークで働こうと思ったらワーキングヴィザが必要になる、というのが大前提。仕事に応募してもヴィザやソーシャルセキュリティ番号を聞かれるのできちんとした職には就けないが、南米系やメキシコ人のデイ・レーバラー(日雇い)でワーキングヴィザを持っている者はいないか、いても少ないだろう。レストランの下働きで観光ヴィザしか持っていないケースも多い。

 NYの無料新聞の求人広告は面白い。ヨーロッパまで飛行機で行って時差ボケのテストをするだけで1000ドルほどくれるという広告が以前あった。そんなうまい話があるはずがない、インチキではないか、と思ったが、アメリカ人の知り合いがそれに応募してきちんとお金をもらったと聞いて、今回も探しているのだがまだ見つからない。リーマンショック以後のNYには景気のいい話は転がっていない。

 治験のアルバイトは日本でも高額の報酬をもらえるが、日系のスーパーで2000ドルくれるという治験のバイトの広告を見つけた。特にヴィザが必要とも書かれていないので応募可、と思いきや、年齢制限があった。

 年齢、人種、経験の有無問わず、というタレント事務所の募集広告があったので電話してみた。ヴィザもいらない、お金もかからない、東洋人は引っ張りだこでゴシップガールズとかトゥルーブルーなどという有名なTVドラマで東洋人のエキストラを募集しているとか、薬のコマーシャルで4000ドル支払うところがあるとか調子のいい話を全部信じた訳ではないが、話のタネにチェルシー地区の古ぼけたビルの一室に出かけてみた。
 看板も受け付けもなし、Aという男性が1人で切り盛りしている。壁一面にタレントとおぼしき顔写真が貼られているが、見た事のある顔はない。どうも胡散くさい。

 私の前に来ていたインド系の美人が40分もかかったので、こちらは今からNYで女優デビューしようという訳でなし、エキストラでも演じてついでにドラマの出演者にでも会えればいいかな、程度の動機なのでいい加減帰ろうと思ったところに私の番が来た。

 最初に世間話が始まった。これを俗にソフニングと言う。詐欺師などが打ち解けてだましやすくする為のウォーミングアップである。結局のところ、このタレント事務所は仕事を紹介してくれるのではなく、ポートフォリオのような写真で金を稼いでいるのだ。顔写真や立ち姿の写真を撮ってモノクロで250ドル、カラーだと350ドルになる。そんなお金を使う気持ちはないが、打ち解けた後なのでどうも断りにくい。電話するから、と逃れようとしたら手付金20ドルを置いていって欲しい、と来た。これには参ったがお金がない、と逃げの一手で何とか事務所を出た。こんな手に引っかかって高い写真を撮る人もいるのだろうか

 NYで活躍しているコメディアン/俳優に聞くと、いくらエキストラでもきちんとしたヴィザを持って、できれば組合に入って活動するべきだとの事だった。

 怪しげな商売はどこの国にもある。特にニューヨークには多いに違いない。(セリー真坂)

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