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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 消費増税の本当の目的

 昨年4月から今年3月末までの税収実績が公表された。前年同期よりも5.4%多い35兆3395億円だった。景気拡大で、前年より1兆8000億円も増えたことになる。なかでも、所得税は前年比で11.8%も伸びたが、景気拡大による増収分は、今回発表分だけにとどまらない。
 例えば、大部分を占める3月決算の企業は、法人税を5月に納める。当然、この統計にその分は含まれていない。昨年度の法人税を含む税収全体が出揃うのは、7月になってしまうのだ。

 そこで、少々乱暴だが、法人税を加えると昨年度の税収がどれだけ増えるのかを計算してみよう。
 財務省の法人企業統計によると、昨年10〜12月期の経常利益は16兆1908億円で、前年同期と比べて26.6%の増加となった。これと同じ比率で、昨年度の法人税収が伸びたと仮定しよう。一昨年度の法人税収は9兆円だったから、昨年度の税収増は2兆4000億円に上ったとみられる。これに、すでに確定している税収増を加えると、昨年度の自然増収は、4兆2000億円に達したことになる。
 そもそも、政府が消費税増税を言い出した理由は、「高齢化に伴って社会保障費が膨張するので、その財源として消費税の引き上げが避けられない」というものだった。
 ところが高齢化に伴う社会保障費の自然増は、年間1兆円にすぎないのだ。つまり、景気拡大は、社会保障対応のための4年分の税収増をたった1年で稼ぎ出したことになるのだ。だから消費税増税などというバカげた政策を採らずに、景気拡大の背中を押し続けていけば、財政再建への道が自ずと開けていったはずなのだ。

 それでは、なぜ政府は消費税の引き上げにこだわり続けているのか。それは、社会保障対応以上に税収が欲しかったからだろう。
 第一は、国家公務員の給与増だ。3月まで、東日本大震災の復興財源確保のためにカットされていた公務員人件費が、元に戻された。誰がどうみても被災地の復興が成し遂げられた事実はないのに、国家公務員は、さっさと給与を元に戻したのだ。
 今年の4月から国家公務員の給与は8%も上昇した。史上最高益を叩き出しているトヨタ自動車でさえ、ベアは2700円、0.7%だった。ところが国家公務員のベアは8%だ。安倍総理は、ベアの実施を財界に何度も要請したが、日本で一番高いベアを実現したのは、国家公務員だったのだ。
 厳密に言うと、実はもっと高いベースアップを享受した人がいる。国会議員だ。国会議員も震災財源捻出のために歳費を2割カットしてきた。それが、この5月から元に戻った。ベア率は、なんと25%だ。
 さらに、2年間続いた復興特別法人税は、今年度から廃止された。国民が支払う復興特別所得税と復興特別住民税は、延々と続くのに、企業の復興財源の負担はなくなった。加えて政府は、更なる法人税負担の軽減を目指していく方針を打ち出している。

 もうおわかりだろう。消費税を引き上げる本当の目的は、消費税で国民から吸い上げた資金を、国家公務員と政治家と大企業にバラまくためなのだ。日本の国民は、一体どこまでお人好しなのだろうか。

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