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最高益トヨタの傲慢 下請けイジメたった1年で復活

 トヨタ自動車が、たった1年で“美談”を返上することになった。2014年度下期('14年10月〜'15年3月)から'15年上期('15年4月〜9月)まで、部品メーカーなどの取引先に対し購入価格の値下げ要請を見送ってきたが、'15年下期('15年10月〜'16年3月)から再開することで調整に入ったという。巨大なピラミッドの頂点に立つトヨタ本体の要請を、下請けメーカーが拒否できるわけがなく、スンナリ決まるのは確実だ。
 「トヨタはリーマンショックの直後など急激に円高が進んだときには、メーカーと共同でコスト削減に当たり、その一部を還元するということで3%近い値下げを求めたことがある。その後、1%近い引き下げ幅に改めており、今回の要請もこのレベルに沿ったものになるらしい。しかし、トータルすれば500億円〜600億円規模の金額に膨らむ。その分、トヨタの収益に貢献するわけで、丸飲みを余儀なくされる下請けは泣き寝入りするしかない」(トヨタOB)

 下請けに対するトヨタの値下げ要請は「長年の伝統」(関係者)。ならば過去1年間にわたる“お目こぼし”は何を意味するのか。
 「トヨタが値下げを求めなければ下請けは経営が楽になり、社員のベースアップが可能になる。この決断を下した去年の秋は、まだアベノミクスの足元がおぼつかない段階。そこでトヨタが下請け企業に対し特段の配慮を示せば、グループ企業がベアを実施し、有力企業が追随すると考えた。実際、豊田章男社長は今年度上半期の値下げ要請見送りを決断した際、その旨を首相官邸に伝えており、政府首脳が『大企業として(トヨタが)範を示したのだろう』と絶賛したほどです」(前出・関係者)

 もとより首相官邸と章男社長がツーカーの仲であることは知られているが、これには続きがある。トヨタは今年の春闘でベア月額4000円、年間一時金は組合の要求通り平均246万円の満額回答で呼応し、経済再生を唱える安倍政権を大喜びさせた。春闘でのトヨタの“英断”に、これまた各社が追随したのはご承知の通りだ。だからこそ財界では「今春闘をリードしたのはトヨタの御曹司。さすがは東京五輪開催時の経団連会長候補様」とヨイショする向きが少なくなかった。
 そのトヨタが、またゾロ下請け泣かせの値下げ要請にかじを切るのだ。「魂胆は何か」と、関係者が真意を詮索するのも無理はない。

 対外的には下請け企業への利益還元が進んだことで経営が改善したこと、及び景気回復への協力が一定の成果を上げたことが理由とされている。実際、帝国データバンクの調査によると、トヨタグループで'13年度と'14年度の業績が2期連続で判明している企業2万6788社のうち、'14年度が増収となった企業は1万5323社(全体の57.2%)に達し、'13年度の増収企業(40.7%)に比べると大きく改善しているとのデータがある。
 しかも、トヨタは来年3月期に売上高、営業利益とも過去最高を更新する見通し。こんなデータの裏付けがあるのに、日本を代表するトップ企業が世間の非難を承知で“悪癖”を復活させるのだ。

 「御曹司の章男社長には、背に腹が変えられない事情があるに決まっている」
 トヨタ・ウオッチャーは辛辣に言う。
 「今年上半期の世界販売台数でトヨタは独フォルクスワーゲン(VW)の後塵を拝し、屈辱の2位に転落した。4年ぶりのトップ転落ですが、依然として新興国では苦戦を強いられており、通年でも2位の座に甘んじかねない。プライド高い御曹司が世界にアピールするとすれば、もう数字しかない。好決算を演出するには、手段をウンヌンしている場合ではなくなった。その危機感が、下請けへの値下げ要請に突き動かしたのは明らかです」

 トヨタは今年の3月、国際オリンピック委員会(IOC)と最高位の「TOPスポンサー」契約を結んだ。契約金は2024年までの10年間で、総額1000億円超。通常の4倍とも5倍ともいわれる空前の大盤振る舞いだ。
 「トヨタには世界のナンバーワンでなければ気が済まない体質がある。当然、販売台数でVWからの首位奪回を狙って猛チャージをかけるだろうし、好決算のためならば鬼とだって平気で手を組む。トヨタにとって、民主党時代の仕分けで物議を醸した『2番じゃダメなんですか?』は禁句なのです」(前出・ウオッチャー)

 聞き捨てならない話がある。下請けに対するトヨタの値下げ要請に経済産業省は「優越的地位の乱用に当たる」と疑義を発した。これが「1年に及ぶ凍結の真相ではないか」(情報筋)というのだ。
 今回の“解禁”に当局がどう対応するか。首相官邸の意向も絡むだけに、がぜん目が離せなくなってきた。

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