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王と長嶋〜プロ野球を国民スポーツにした2人の功労者〜(10)庶民的なDNAを持つことを誇りに

 「日の丸を背負ったミスターが病気になったので、気をつけなければと、年に2度やっていたドック入り検査をもう1度増やして、念には念を入れて3度もやったのに、オレまで病気になってしまった」
 アテネ五輪日本代表・長嶋監督が志し半ばで本戦を前にして脳梗塞で倒れたことで、日の丸を背負う計り知れない重圧を知ったWBC日本代表・王監督は、万全の態勢を整えたはずなのに、胃ガンという病魔に襲われた。そのショックは大きかった。

 「ミスターもふだんから健康管理を徹底していた。それなのに、病気になってしまった。オレだって、必ず検査入院したり、体のことには十分過ぎるほど気をつけていたのに、病気を防げなかった。なぜなのか」という王さんの自問自答は当然だろう。
 「今から考えると、胃カメラを飲んで検査しているから、絶対に大丈夫だと過信していた。バリュームも飲んだ方がよかったんだ。君たちもこれからは胃カメラとバリューム検査の両方をやった方がいいからね」。こう体験的なアドバイスを報道陣にもする。
 どんな大きなアクシデントが起きても負けずに前向きに立ち向かうのが王さんだ。大好物の宮崎の釜揚げうどん、ラーメンを食べられるようにと、目標を段階的に設定して、克服していった。「最初は半分も食べられなかった釜揚げうどんがようやく一人前食べられるようになったよ。最後は一番食べにくくなったラーメンが食べられれば、もう大丈夫だろう」。1つ1つ階段を上がっていくのが、何事においても王流だ。

 コミッショナー特別顧問、日本代表監督相談役としてWBC日本代表候補の宮崎合宿初日を視察した夜、原監督、コーチ陣と会食。「王さんはすごい勢いでフグを平らげていた」とその食欲の旺盛さを見せつけ、大食漢復活への順調な回復ぶりをアピールしたという。
 食を巡るONの好対照ぶりも面白い。長嶋さんが宮崎合宿最終日前日に視察をしたが、その前に東京でフグを一緒に食べたという球界OBがこう語っている。「ミスターも元気になったよ。フグの刺身を箸で一気に集め、豪快に食べる、あの元気な頃のミスター流だったからね」と。今回はたまたま同じフグの話題になったが、食に関してはその場所が「居酒屋の王」VS「料亭の長嶋」という対極にあるのだ。
 「ミスターはこういう庶民的な居酒屋には行けないだろう? オレは平気で行けるんだよ」と王さんは、居酒屋通いを自慢げに語る。日本食なら高級料亭、中華料理でも一流の店、個室の長嶋さんとの違いをアピールするのだ。実際に、王さんは居酒屋だけでなく、中華料理を食べるときにも、評判の街の名店というサラリーマンでも行けるような、いわゆる中華屋さんに行く。
 「オレはラーメン屋のせがれだから」というのが口癖で、庶民的なDNAを持っていることを有言実行している。そのことに誇りを抱いている。
 長嶋監督、主砲・王という長嶋第一次政権下の広島遠征の時も、選手宿舎から近い、道路をはさんだ斜め向かいにON行きつけの喫茶店があった。お茶を飲むのも同じ場所を嫌う、「両雄並び立たず」というわけではない。趣味趣向が全く違っているのだ。
 それぞれどういう喫茶店かといえば、落ち着いた大人のムードのN御用達に対し女性客も多い華やかなO御用達だ。

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