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熱き侍たちが躍動!! メジャーリーグ Times 今オフか19年オフか 大谷翔平のメジャー移籍

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)東京ラウンドの開催に合わせて大リーグのトップであるマンフレッド・コミッショナーが来日し、「大谷は大リーグ行きを'19年のオフまで待たなければならない」「(昨年11月末に改定された新ルールに例外を設けて)大谷を特別扱いすることはしない」と明言した。これを受け、今オフの大谷のメジャー挑戦を危ぶむ声が出ている。

 大リーグの旧労使協定では、「(1)海外で5年以上プロ経験がある」「(2)23歳に達している」という二つの条件を満たしていればメジャーに年俸面で制約がないFA移籍をすることが可能だった。'17年オフにメジャーに挑戦する場合、大谷はこの二つの条件を満たしているため、契約規模は田中将大の7年1億5500万ドル(178億円)を上回る8年2億ドル(230億円)規模になると予想されていた。
 しかし、昨年11月末に新労使協定が締結され、FA移籍できるのは「(1)海外でのプロ経験が6年以上」「(2)25歳に達している選手」という条件に変更になった。

 大リーグではドラフト経由でプロ入りする選手(米国、カナダ、プエルトリコの高校、大学を出た選手)は、どんな選手でもマイナーで1〜3年プレーしてから20〜23歳でメジャー入りすることになる上、メジャー入りした後の3年間は最低年俸期間、4年目から6年目までは年俸の制約を受ける年俸調停期間になってしまう。そのため、早くても26歳か27歳にならないと年俸が超高額(2000万ドル以上)にならない。
 例えば、大リーグNo.1投手のクレイトン・カーショウ(ドジャース)は20歳でメジャーに昇格後、最初の3年間は最低年俸でプレー、次の3年間の年俸は400〜1100万ドルで、27歳の時に初めて実力に見合った超高額年俸(3000万ドル=34億円)を受け取った。
 メジャー2年目の昨シーズン、24歳でナ・リーグのMVPに輝いたケビン・ブライアント(カブス)は、今季はまだ3年目。なので年俸は最低年俸に毛が生えた程度の金額だ。

 このようにメジャーの「正規ルート」である、ドラフト指名→マイナーリーグを通ってメジャーに上がった選手は、いくら傑出した成績を出しても、26〜27歳までは超高額年俸を取ることができない。
 その一方、キューバや日本から来るトップレベルの選手は、FAで大型契約をゲットし、超高額年俸を受け取る現実がある。
 その結果、両者の間に極端な年俸格差が生じるようになった。そのため労使協定の改定に合わせて、FA入団できる年齢が23歳から25歳、海外プロ経験の年数が5年から6年に引き上げられたのだ。

 ただ、この「(1)25歳」「(2)プロ経験6年」という縛りは、あくまでもFA入団する場合である。マンフレッド・コミッショナーが今回の来日時に「大谷は大リーグ行きを'19年のオフまで待たなければならない」と発言したのも、「金銭的にメリットの大きいFA入団をする場合は」という前提があっての話だ。
 二つの条件を満たしていなくても「(1)マイナー契約」「(2)格安契約金」で入団することはできる。年俸体系もドラフト経由の選手と同じになることを呑めば、実力次第でメジャーのマウンドで投げることは可能だ。

 大谷はカネに無頓着で、あるのは早くメジャーのマウンドで投げたいという青雲の志だけだ。金銭的な損失は障害にならず、来季はメジャーのマウンドに立ってパワーピッチングを見せている可能生が高い。
 マイナー契約は3Aの球団と契約を交わすことになるが、これは何の障害にもならない。ハイレベルな選手はすぐにメジャー契約に変更になるからだ。大谷は飛び抜けた実力の持ち主なので、開幕からローテ入りして投げることになるだろう(球団によってはFA権取得年限を1年遅らせる目的で4月下旬からメジャーで使い始めることもある)。

 ハッキリ言って金銭的欲求が希薄な大谷にとって、今回のルール改定で失うものはあまりない。表に示したように金銭的に100〜130億円損をすることになるが、獲得を目論む貧乏球団にとっては、逆に願ってもない状況が出現したことになる。
 大谷は金満球団より弱体球団に入団し、自分が牽引車になってチームを強くしたいという希望を持っているという。その本命として日ハムにキャンプ地を提供しているパドレスの名が取り沙汰されているが、他の弱小球団も獲得に乗り出すのは必至だ。

 バッティングでも活躍したい大谷は、投手も打席に入るナ・リーグのチームに入る可能性が高い。だが、ア・リーグの球団がDHでも一定の出場機会を与えることを条件に獲得合戦に加わる可能性もあり、成り行きが注目される。

スポーツジャーナリスト・友成那智(ともなり・なち)
今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2017」(廣済堂出版)が発売中。

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