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プロ野球くじ導入に隠された「巨人包囲網」全内幕

 超党派の国会議員による『スポーツ議員連盟』は4月14日、スポーツ振興くじの対象競技を見直し、サッカーに続いてプロ野球を軸に他の競技の導入を検討することを決めた。プロジェクトチーム(座長=自民党・遠藤利明衆院議員)を設置して議論を煮詰め、関連法を改正するという。

 totoは昨年度、1107億円を売り上げ、153億円をスポーツ施設の改修費用などに充てている。対象競技を拡大するのは、2020年東京五輪・パラリンピックでメーン会場となる新たな国立競技場の改修費などの財源を確保するためで、併せて現行では売り上げの5%を建設費に充てられることになっている法律を改正し、10%まで引き上げる方針も打ち出している。
 「これまではどちらかと言うと、2019年にW杯が日本で開催されるラグビーや、川淵三郎氏を新会長に迎えたバスケットボールへの導入が先行していた。プロ野球では過去に賭博が八百長につながった“黒い霧事件”が1969年に起きており、反対する声が強かったからです。しかし、事前にコンピューターが無作為に勝敗を予想したくじを購入してもらう方式を採用することで、八百長が入り込む隙が消えた。全て運任せだからです。ラグビー、バスケにするよりファンが比較にならないくらい多いプロ野球に導入しよう、という流れになったのです。新国立競技場建設のためという大義もあり、法整備は決まったも同然。カジノ法案の成立が進んでいないことも追い風になっています」(全国紙政治部記者)

 球界ではtoto参戦賛成派が大勢を占めている。ヤクルトの真中満監督は「野球界が注目されるのはいいこと」と歓迎し、千葉ロッテの山室晋也球団社長なども「野球の裾野を広げるという意味でも有意義。現時点で反対する理由はない」と語っている。プロ野球の視聴率低下に頭を抱える各テレビ局も「これでお茶の間にプロ野球ファンが戻ってくる」と大歓迎だ。

 totoのプロ野球導入には、実はもう一つ大きな思惑が秘められている。球界の盟主として大戦力をほしいままにする巨人、そして財力を背景に球界の新盟主になりつつあるソフトバンクへの抑止である
 「今回の降って湧いたtoto導入の真の狙いは、12球団の戦力均衡にある。くじの性格上、八百長防止のため、コンピューターが無作為に勝敗を選ぶ『非予想系くじ』とする。この方式が最も有効に働くのはチーム間の戦力の均衡。差が少ないほど楽しみが拡大し、購入者が増える。どんなくじを引いても当たる予感を感じさせるからです。そこに巨人以外の各球団が導入に積極的な理由がある。これを機に本来のプロ野球の姿を取り戻そうというのです」(スポーツ紙デスク)

 推進派がtoto導入と引き換えに取り組もうとしているのが、ドラフト制度の改革だ。現在の入札抽選制度を改め、前年度最下位球団から順番に指名するウエーバー制度に戻す。これが実現すれば、10年経てば自然と戦力は均等になる。
 「全国に本拠地が分散したことで人気が分散し、パ・リーグ球団の観客数が増えた。ただ、いまだに戦力面では巨人との差はある。しかし、ドラフトが完全ウエーバー方式に戻れば、お金を掛けずして戦力差が縮まる。無駄な競争が姿を消し、契約金の高騰も抑えられる。上限1億円などと強調しておきながら、あれやこれや上乗せをしている球団がほとんどで、これが球団赤字の一因にもなっている…。toto参入はもってこいの球界改革、粛正の転機。ジャイアンツ以外の全球団が一致団結して巨人包囲網を敷こうとしているのです」(パ球団幹部)

 FA制度にもメスを入れる。現行ではFA制度で恩恵を受けることができるのは、巨人と阪神、資金力のあるソフトバンク、オリックスなどに限られる。
 「職業選択の自由がある以上、選手が希望球団を選べないドラフト制度とセットで、好きな球団に移れるFAの権利は認められるべきです。ただ、その場合、利益を享受した側は何らかの損出を被ってしかるべき。そこで検討されているのが、FA選手を獲得した球団はバーターとして、送り出した球団にドラフト1位、または2位の指名権を譲渡する。そうすれば、自然と12球団の戦力は均等になるし、安易なFAも姿を消す。もっともこの方式は米メジャーで採用されているFA制度で、MLBのルールで野球規則を作っているNPBが、これまで頬かぶりしていただけのこと。読売ジャイアンツに遠慮していたのでしょうが、こちらもtoto参戦で見直しが本格的に始まる。これもまた巨人包囲網です」(セ球団OBの野球解説者)

 戦力均衡は球界が「フェアプレーの精神」に基づき、真摯さをアピール、五輪での実施競技復帰を目指そうとしていることも背景にある。しかし、本来なら後押しして当然の労組組織、プロ野球選手会は、失策、勝敗の責任投手などの記録が残ることからtoto参加を危惧しており、慎重な姿勢。巨人擁護という歪な構図となっている。
 2020年東京五輪の影響で、10代の運動能力の高い子どもたちは野球より五輪競技志向が高い。これだけでも巨人には痛手だが、toto導入がさらに追い打ちをかける。
 どこの誰が仕掛けたのかはわからないが、究極の巨人包囲網が整いつつあるのは確かなようだ。

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