search
とじる
トップ > ミステリー > 怪談作家・呪淋陀(じゅりんだ)の「怪談:恐怖の自殺物件」

怪談作家・呪淋陀(じゅりんだ)の「怪談:恐怖の自殺物件」

pic pic

画像はイメージです。

 「事故物件ありますか…?」

 私が部屋を探していた時のこと。事故物件とは本当に存在するものなのかと、不動産業者に聞いてみた。

 事故物件とは、以前に自殺や殺人、火災による死亡事故などの嫌悪すべき歴史的事実があったもの。基本的には、重要事項の説明義務の対象となり、取引価格が低くなるケースもある。

 たいがいは扱っていないというような返事だったが、そこの不動産業者は、意外にもすんなりとある物件を提示してくれた。そのマンションは、駅から少々離れているものの、部屋が三つもあり新築だった。

 他の部屋の家賃相場が10万円代だったのに対し、そこの二階の角部屋だけ、なぜか5万円と凄く安かった。

 以前住んでいた男性がその部屋で病死したらしい。人が死んだということを除けば、まったく申し分ない物件だった。

 一通り説明が終わり、不動産業者が席を外した時。机の上に置かれているその物件の資料ファイルが何となく気になった。中を取り出してよく見てみると、なぜか入っている書類の下から、部屋の間取り図が出てきた。

 何とそこには、玄関の箇所に印がしてあり「玄関・自殺」と赤鉛筆ではっきりと書き込まれていた。

 説明では病死だったはずだが…。やはり自殺とは言い辛いものなのだろうか?

 「ほら、そこのマンションなんですが…」

 不動産会社勤務のK氏は、この道20年のベテランだ。車で物件案内してもらっている時のことだった。

 K氏は、車窓から見える少々古めかしい高層マンションを指し示した。

 「あのマンションにアクセサリーデザインをしている男性が住んでいるんです。彼は職業柄、部屋に篭って作業することが多いので、家にいると変な物音や人の気配がするとかは日常茶飯事だったみたいです。窓から時々幽霊が覗くとかも言ってましたね。でも、強い方なのか、平気で暮らしていたんですよ」

 ある日、彼は部屋で一人作業をしていた。

 突然、「ぎえあぁぁ〜」と、凄い悲鳴と共に鈍い大きな音がした。

 驚いてベランダに飛び出し階下を見た。すると、何とそこには飛び降り自殺の惨たらしい死体があった。

 「彼は第1発見者だったので、警察の検証に立ち会ったりと大変だったみたいです。気の毒に随分ショックを受けたらしく、最近、自殺者の幽霊が現われるようになったと言ってましたね。とにかく一刻も早くあのマンションを出たいと言っているので、この後に彼の相談に乗るんですが…」

 自殺者の断末魔の叫びと地面に激突する音、血だまりの中に飛び散る脳髄…それら全てがフラッシュバックとなって、彼を苦しめ続けているのだった。

 そのマンションは以前から飛び降り自殺が多く、それも住人ではなく、なぜか余所からわざわざやって来ては身を投げるのだという。

 飛び降り自殺は、落ちる瞬間に後悔するという。落ちている間、まるでスローモーションのように時は流れる。落下する恐怖をゆっくり味わいながら、地面に激突して自身の身が砕け飛び散る苦痛を味わう。だが、自分が死んだということはわからない。飛び降りた時の恐怖と苦痛だけが、死後も繰り返し襲って来ると聞いたことがある…。

 自殺者のネガティブな思いや生への執着が残留思念となり、負の連鎖となって更なる悲劇を生むのかもしれない。

(怪談作家 呪淋陀(じゅりんだ)山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

関連記事


ミステリー→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

ミステリー→

もっと見る→

注目タグ