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三谷啓子のマイクと声と私 第2回「ラジオCM制作編」

 私はラジオに携わる仕事をしておりますので、今回はラジオCM(以下、CM)の制作についての話をしたいと思います。

 『エフエムたちかわ』でのCMは、20秒と40秒で制作するものがほとんどです。
 一般的に「20秒」と聞くと「あっという間で短いなあ」と思うでしょう。しかし、これが結構な情報量なのです。で、この20秒が、CMナレーターにとって、言うまでもなく真剣勝負そのもの。当たり前の話ですが、スポンサーは《知名度アップ,売り上げアップ》のためにお金を払っている訳です。当然、CMナレーターは、一瞬たりとも気を抜くことはできません。
 そして本番−−。先ずは、出来上がったCM原稿の内容を読み解くことから始まります。《クライアントの訴えたいこと》《想いとイメージ》《強調すべき点》など…。
 起承転結やそこ(原稿)に秘められたドラマ…つまり原稿に書かれている文字の裏側(いわゆる“行間”というモノです)に存在する見えない膨らみなど、いろいろな想像を自分自身に巡らして(自分の)気持ちを「ググッ」と入れていくのです。

 今度は原稿読みに進みます。ここからが読み手の“技術とセンス”の集大成。《間》《テンポ》《卓立》《ブレス》《音域》《音色》(業界用語で分かり難くてすみません)…などいろいろです。
 さらに20秒CMの場合、17秒〜18秒で読み終えることが秘技。CM前とCM明けの無音部分と番組BGM(ラジオをよく聴いて下さい。意外にもバックに音楽が静かに流れているのですよ)の関係上、1秒以下のコンマ何秒の世界で、ペース配分が必要になります。いささか、早めでCMを終えると、CM明けの番組がゆったり入れます。CMを20秒、目一杯使った場合などは、最後の最後で巻き(時間が無くて早口で話す事)になり、聴取者が聴き難く、印象は良くないですね。CMがリスナーの耳に「スーっ」と入っていかないですから。
 「語るように歌い、歌うように語る」とラジオ業界では言われております。説明が難しいですが「読んでいるのだけれど読んでいるようには読まないこと」。これが鉄則です。皆さん、分かりましたか〜!? 基本は、自然体。自然体に実践する事です。

 続いて「声」の出し方。CMの20秒を読み終わってもカラダが楽ではいけません。「声」というのは「気持ちで上げて,気持ちで出していく」もの。これは身体全身を使う、「全身運動」です。本当に難しく、自分で精一杯声を出して「最高にうまくできたかな」と思っても、悲しいかな「ごくごく普通にしか聞こえないもの」なのです。
 とにかく自分の殻を破り、自分を捨て、これまでの自分に決別して、羞恥心をどこかにやり(少しオーバーですが…)体当たりでぶつかっていかなくてはいい作品(CM)は作れないという事です。
 技術的な話になりますが、声を出すイメージも絶対必須条件です。例えば、「(収録場所の)スタジオから見える対面のビル○○階に向かって声を出す感覚で」といった具合。イメージです。眼で見えるモノが全てでは無いのです。感覚…視覚、聴覚という頭で考えるだけモノより身体の感覚から入るのも実は、大切なのです。それがイメージ。
 文章や単語を無感情にまっすぐ(フラット)読みたい時は、自分の掌を目の前で左から右に動かしながら声を出せば、不思議と自然にフラットな読みができます。少し高めの声で読みたい時は、自分の目の高さよりも少し斜め前の方へ向かって手を伸ばせば、自然に高めになります。

 尚、収録現場はスタッフ以外、誰も見ていませんから録音時に「どんな姿」「どんな顔」「どんな姿勢」だろうが、そういったことは心配無用です。
 とまあ、このような感じでラジオCMの収録をやっております。収録後、スタッフの手によって「私の作品」が「ラジオの完成品」へと育っていきます。
 今度、(勿論、『エフエム立川』以外でも)CMを聴く時はこのような背景も少し、思い出して聞いてみてくださいね。
(エフエムたちかわアナウンサー)

【三谷啓子(みたにけいこ)プロフィール】

特技・広島風お好み焼き作り(腕は抜群!と自画自賛)
趣味・国際交流ボランティア活動
(ホームステイの受け入れや留学生交流、やっぱり“人”が好き)
褒賞・2007年3月「防災・防犯無線」アナウンスの永年協力に対し、立川市長より感謝状を授与される

〜2010年から立川拘置所で全国初の所内放送をボランティアで始め、新聞各紙,TV,ラジオ,海外メディアにも大きく取り上げられ、注目を集めている〜

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