「丸紅とイオンは早期決着を目指している半面、条件面での隔たりが大きいとされています。これはイオンが提示した買い取り価格が、丸紅には安過ぎて不満だということを意味します。そんな舞台裏でのドロドロの駆け引きを察知したウォルマートが、一気に勝負をかけてくる可能性もあります」(前出・地場証券役員)
意外な話がある。読売はイオンが丸紅に株の買い取りを打診したと報じた。その意味ではイオンが主役と受け取れるが、これには前段がある。最初に交渉を持ちかけたのは丸紅、それも複数の流通業に打診した結果、真っ先にイオンが飛びついた、というのである。
「丸紅は、ダイエーの筆頭株主の座にメリットを感じなくなったに違いありません。第一、出資比率の29%からして重要事項に拒否権が行使できる3分の1超ではなく、いかにも中途半端な水準です。桑原道夫社長を送り込んでいるといっても、丸紅“丸抱え”でのダイエー再建は正直いって荷が重い。言い換えれば丸紅は、ダイエーよりも大事な重要案件を抱えているからこそ、株式の高値売却に舵を切ったということです」(ライバル商社幹部)
それは何か−−。今、関係者の注目を集めているのは丸紅が昨年夏、約3000億円を投じて米穀物メジャー、ガビロンの買収を発表したことだ。ところが、正式買収には米国や中国など世界11カ国から独禁法上の認可が不可欠なことから、株式取得の時期が大幅に遅れている。ライバル商社幹部が続ける。
「丸紅の体力をもってすれば買収マネーの調達に事欠かないと思うでしょうが、実際はそうじゃない。というのも丸紅は、去年の9月中間期で財務基盤の健全性を示すD/Eレシオ(負債÷自己資本)が2.01倍だった。今年の3月末にはこれを1.8倍まで改善すると公言した手前、これを達成できなければ格付けにも影響する。そこで負債削減という大命題の下、新たにガビロン買収資金を調達する必要に迫られた結果、保有するダイエー株での資金調達を考えたようなのです」
ガビロンの買収により、丸紅の穀物取引高は、世界トップの米カーギルと肩を並べることになる。その野望達成のため、本業の利益にそれほど貢献しないダイエー株売却の選択肢は“正しい戦略”だろう。しかし、イオンとウォルマートの争奪戦となれば俄然、話はキナ臭くなってくる。
一説によると丸紅は双方に株売却を打診、これに真っ先に応じたのがイオンだったとされる。当然、ウォルマートはイオンが提示した買い取り価格を参考に勝負をかける。これにイオンがどう応戦するか。
三者三様の銭ゲバ合戦から目が離せない。