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静岡県御前崎市桜ヶ池「龍神伝説の石」

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画像はイメージです。

 静岡県御前崎市佐倉にある桜ヶ池は、三方を屏風のように原生林に囲まれた所にあり、池は深い緑色の水を湛え、2万平方メートルもの広さがある。今から約2万年ほど前、地殻の変動により形成された丘陵の谷が風や波によって運ばれた砂によってせき止められて出来た堰止湖だ。そんな桜ヶ池には「龍神伝説」が伝わっている。

 平安末期の12世紀頃、比叡山の名僧皇円阿闍梨が、「末法思想に悩む一般大衆を救済するには56億7千万年後の弥勒菩薩の出現を待つほかなし」として自ら龍と化し桜ヶ池に入定され、その後高の弟法然上人が恩師の供養をされたという。この「龍神伝説」にまつわる不思議な石が、花園村(現在の愛知県豊田市花園町)に住んでいた酒造りで有名な寺田伝兵衛の家に伝わっている。

 2代目の寺田伝兵衛という人物は大変な癇癪持ちで、何か気に入らないことがあると怒ってばかりいた。時には妻にも手を上げることもあり、家人も困っていた。しかし、そんな時もどうすることも出来ず、ジッと我慢する他なかった。ところが、優しい妻も若くして亡くなってしまった。伝兵衛は嘆き悲しみ、今までの自分の行いを深く反省した。

 明和2(1765)年3月2日、心を入れ替えた伝兵衛は妻の追善のために巡礼の旅に出た。『二十四輩巡り』といって、親鸞聖人の遺跡24ヶ所巡るというものである。大変な旅であったが、伝兵衛は一か所づつ一心不乱にお参りし、その確認として巻物に印を押してもらい、旅を続けていた。

 遠州(静岡県)に辿り着いた時、龍神伝説で有名な桜ヶ池に立ち寄った。この池の畔で石を拾い、旅の記念に持ち帰ることにした。そして、同年8月17日、半年近くも掛かった巡礼の旅は終わった。

 家に戻った伝兵衛は巻物を仏壇に備えて、桜ヶ池で拾った石も汚れを落とそうと取り出した。そして水をかけたところ、石には見る見るうちに「南無阿弥陀仏」という文字が浮かび上がってきた。伝兵衛は、石を何度も手を合わせて拝み、家宝として大切に保管したという。

 それ以後、毎年、正月とお盆になると、寺田家ではこの石と巻物が飾られるようになったのだそうだ。

(写真:「寺田伝兵衛屋敷跡地」愛知県豊田市花園町)
(皆月 斜 山口敏太郎事務所)

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