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やくみつるの「シネマ小言主義」 イケメン殺人鬼の再現ドラマ『テッド・バンディ』

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提供:週刊実話

 1970年代のアメリカで、30人以上の若い女性ばかりを惨殺した容疑で、3度の死刑宣告を受けながら無実を主張。脱獄本『パピヨン』を心の支えに2度も脱獄したシリアルキラーの実話物です。

 彼は凶悪犯のイメージを覆すハンサムなルックスとIQ160の頭脳の持ち主。法律の知識も豊富で、自分で自分の弁護を自信たっぷりに繰り広げる様子が全米のテレビで生中継され、傍聴席にはファンの女性たちが詰めかけたそうです。

 こうした実話物のお約束で、エンドロールでは実際の映像が流れるのですが、本人や獄中結婚した女性、死刑免除を訴える母親まで激似なのには驚きました。映画受けする奇想天外なキャラ設定に見えながら、「事実は小説より奇なり」を地で行っています。

 作品パンフレットによると裁判の10年後の死刑執行までライブ放送され、何百万人も視聴したそうで、アメリカでは超有名人。再現ドラマとしても、ディテールのレベルが高くないと、米国民には納得されないのでしょう。一方、自分も含めて、日本でのテッドの知名度は高くない。だから「もしかして、本人が主張するように冤罪なのかも」と、ミステリーのように謎解き目線で見てしまいました。

 狡猾な彼は、これだけの猟奇的犯罪を犯しながら、ほとんど証拠を残していない。現在であれば、本当に無罪を勝ち取った可能性もあるらしいとか。ですから、数多くのエピソードは伏線として回収はされません。裁判で死体の尻に残った歯形が決定的証拠と言われても、モヤモヤが残ってしまいました。

 ストーリーとは別に印象的だったのは、当時のフロリダ州刑務所のおおらかさ。獄中結婚した妻だからか、面会は自動販売機のあるような広い談話室。見張り役をちょっと買収するだけで、物陰で妊娠させてしまうことも可能なんですから。

 ところで、本作中に新聞に載った犯人の似顔絵が出てきますが、似顔絵プロの自分から見てもよく似ています。一方、日本での犯人の似顔絵は、捕まってみて初めて似てると再認識するファジーな精度に意図的に下げているとか。特徴を限定しすぎると、少し異なるだけで手配犯とは違うかもと思わせてしまうらしいんですね。

 以前は消費者金融の広告が入ったティッシュが、よく配られていました。2001年に起きた武富士弘前支店の強盗殺人・放火事件の犯人似顔絵が入ったティッシュも同様。やはり、適度な似せ方でした。事件史の遺物として未使用のままコレクションしています。

_画像提供元:(c)2018 Wicked Nevada,LLC
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■テッド・バンディ
監督/ジョー・バリンジャー 出演/ザック・エフロン、リリー・コリンズ、カヤ・スコデラーリオ、ジェフリー・ドノヴァン 配給
/ファントム・フィルム 12月20日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
■1969年、ワシントン州シアトル。テッド・バンディ(ザック・エフロン)とシングルマザーのリズ(リリー・コリンズ)はバーで出会い、やがて幼い娘モリーと3人で暮らすようになる。しかし、その幸せは一変。テッドが誘拐未遂事件の容疑で逮捕。さらに、その前年にも女性の誘拐事件が起きており、目撃された犯人らしき男の車はテッドの愛車と同じ車種。公表された似顔絵もよく似ていた。テッドは誤解だと説明するが、次第にいくつもの事件への彼の関与が判明する。

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漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)レギュラー出演中

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