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藤浪の“反逆”から見える虎の近未来像

 “トラの恋人”中島裕之内野手(32=アスレチックス2A)のオリックスバファローズ入団会見が行われた12月7日、藤浪晋太郎投手(20)が契約更改に臨んだ。
 4000万円増の8500万円でサイン−−。3年目では球団史上最高額となったのは既報通りだが、約95分間に及ぶロング交渉は『トラの近未来』を切り開く契機ともなったようだ。

 藤浪が球団事務所の一室に入ったのは、同日の午後3時。トラも獲得に乗り出した中島の入団会見、ドラフト同期の大谷翔平(20=北海道日本ハム)が1億円の大台突破を果たした“速報”は、すでに阪神・球団事務所に詰めかけたトラ番記者にも届いており、経営陣も知らないはずがなかった。予定の1時間を大幅に過ぎ、藤浪が記者団の前に現れた。
 「いい評価をしていただいたと思っております」
 サインをしたか否かを問われた後、藤浪はハキハキとした口調でそう切り出した。予定の交渉時間を30分以上も過ぎるとは経営陣も予想していなかったようだが、その理由は藤浪の成長の早さによるものである。
 「藤浪は来年1月、広島・前田健太の自主トレに同行したいと話していました。阪神は『内規』で入団3年目までは自軍施設で行うよう、通達しています。藤浪は日米野球に招集され、マエケン(前田)や各球団の先輩投手から変化球の握り、調整法を伝授されたそうです。契約更改の席では、他球団の先輩投手のもとで勉強したいと訴えるつもりだと話していいまし」(報道陣の1人)
 ロング交渉になった理由はそれだけではなかった。藤浪は11月に招集された『侍ジャパン』の練習環境に衝撃を受け、それを阪神でも取り入れてほしいと訴えたという。
 その1つが栄養学を学ぶ環境であり、滞在宿舎などに設けられた『プロテイン・バー』だ。阪神の練習環境が遅れているという意味ではない。練習器具を増やすのなら、代表チームが取り入れているものも参考にしてほしいと伝えたのだ。

 プロでまだ2年しか投げていない20歳の若者が『環境改善』を訴えたのは意義深い。
 秋季キャンプで二軍首脳陣が口をすっぱくして選手に伝えていたのが「自分で考えて…」の言葉だった。練習もコーチの指示がなければ何もできない若手ばかりである。それは他球団も同じだが、一流と呼ばれる選手には多かれ少なかれ、『自分流の練習スタイル』を持っている。自分自身で目標を掲げ、そのために必要な練習は何か、どんなトレーニングをやればいいのかを考え、実力を高めていく。秋季キャンプのテーマが『自立』だった。
 「来春のキャンプで江夏豊氏を臨時コーチとして招聘するのも、その一環です。伝統球団の独特の緊張感、過度な期待、注目度の高さにより、自分を見失ってしまう若手が多い。精神面でのアドバイスを、レジェンドに伝えてもらおう、と」(球界関係者)

 その意味では、藤浪はルーキーイヤーから周りに流されず、成長の階段を確実に上ってきた。この若さでチーム全体のことを語れるのだから、藤浪は大谷にも勝る『エースの素質』を持っているのだろう。
 契約更改の交渉にも当たった高野栄一・球団本部長は報道陣に対し、大谷よりも少ない8500万円を藤浪に提示した理由をこう説明している。
 「向こうは2つ(二刀流)やっているから…。ダルビッシュ、田中(将大)、前田(健太)といった投手を参考に見ていますが、それ以下になっていないと思います」
 プロテイン・バーの設置などの環境改善に関しても、「侍ジャパンにトレーナーを派遣しているので聞いてみます」と“前向き”に答えていた。契約更改で環境改善を訴える選手はこれまでにもいた。だが、どういうわけか、ケンカ腰になってしまう選手も少なくなかった。経営陣と膝を突き合わせ、チームの現状を理解してもらう。そこから改善すべき点の優先事項を話し合う…。藤浪はそんな大人の交渉ができる若者でもある。

 阪神はFA補強に失敗した。だが、彼の言動を見ていると、近未来像に期待が持てるのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)

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