「○○は挫跖なんだよな」
「あのレースは引っ張ったよ」
「本日はヤラズで行きます」――。
あるいは、
「乗ってくるだけネ」
「10Rは参加賞っぽいけど…」
「状態がよくないから使っても微妙かも」
などの文言も送信しており、これらを見る限り不正行為も可能と思えてくる。
これは日本競馬界のみならず、公正保持を遵守しなければならない公営ギャンブルでは絶対にあってはならないことだ。
杉村騎手が騎乗を自粛していた4月の川崎競馬開催中に、同競馬馬主役員室が杉村騎手を呼び付けているのだが、その際、杉村騎手はこう言い放ったという。
《俺を干すというのなら、他の騎手はもっと悪いことをしており、それらをすべてバラしてやる》
これを伝え聞いた今野騎手会長は、組合の指示かどうかは定かではないが、所属騎手に対して「LINEやメールの履歴をすべて消去しろ」と伝達したというのだ。これは証拠の隠滅ではないか。
南関東の競馬場では、'15年に大井競馬場所属の御神本訓史騎手が、身分を偽った外部者を調整室に招き入れ30日間の騎乗停止処分になっているが、杉村騎手には明らかに外部者への度重なる情報漏洩があり、御神本騎手と比較すれば同等の30日の騎乗停止では甘過ぎると言わざるを得ない。杉村騎手の「すべてバラす」が、組合側をして忖度させたのだろうか。
このように組合は、ファンに見せかけの公正な競馬を装ってはいるものの、杉村騎手の一件を見ても規律の遵守や保持からは大きく逸脱。これはファンを徹底的に裏切る行為だ。
さて「携帯持ち込みは組合も厩舎も調教師もみな知っている」という杉村騎手の“証言”は事実なのか。
川崎競馬組合、地方競馬全国協会は本誌の取材に対し「あり得ません」との回答。杉村騎手は不在が続いており接触できなかった。
また、取材した川崎競馬の調教師は一様に「携帯電話の持ち込みなどできない」と否定したが、そのうちの1人、川崎競馬場において父も調教師、弟の騎手は常にリーディング上位である競馬一家の某調教師に話を聞いたところ、驚くべき見解を示した。
「調整室から連絡することが、そんなに悪いことですか? 僕はいいと思いますけど」
A子さんは「組合は私の告発の意図を全然理解していない」と憤る。
「川崎競馬場の発展や、ファンに愛され、喜ばれる競馬場であってほしいとの願いから告発に至りましたが、それを組合は全く理解せず、自らの管理・監督義務違反を認めないばかりか、反省の弁もなく、組織ぐるみで事実を隠ぺいしていることは、私だけでなく全国の競馬ファンも納得しないでしょう。結局、『公正保持違反』や『内部情報の漏洩』などのクサい物にはフタをし、真相や事実を隠した処分と処分の経過理由をさっと述べただけでお茶を濁しているのです」
一連の“工作”が騎手会や調教師会によるものか、組合および協会なのか、杉村騎手の言う「もっと悪いこと」とは、ズバリ『八百長』を示唆したものなのか実に興味深い。
この処分の闇は深い。