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2011年甲子園(番外編) 連続出場が難しくなったのは誰のせい?

 今夏の甲子園大会では初出場校の健闘も目立ったが、習志野(千葉)、作新学院(栃木)、静岡(静岡)など『古豪』の帰還も話題となった。しかし、代表校49校を改めて見直してみると、2年以上続けての『連続出場校』はごくわずかしかない。能代商(秋田)、聖光学院(福島)、福井商(福井)、智弁和歌山(和歌山)、開星(島根)、英明(香川)、明徳義塾(高知)−−。

 私立一辺倒の時代が終わり、地域格差も解消され、実力は拮抗している…。人気小説のように、ビジネス書を読んで公立校が短期間で変貌することは現実的には起こり得ないが、高校野球の世界で毎年勝ち続けることは、さらに難しくなった。

 『連続出場』を果たすには、毎年強いチームを作らなければならない。そのためには『強さ』を引き継ぐこと、つまり、2年生以下で編成される新チームを甲子園出場可能なレベルまで引き上げなければならないのだ。しかし、関東圏の私立高校監督はこう否定する。
 「2年生以下の新チームをいきなり秋季大会で勝たせるのは大変なんです。現実問題として、県大会で敗れたライバル校は夏休みから新チームをスタートさせています。こちらは甲子園に出場させていただいた分、1カ月遅れの始動となりますからね」
 どの甲子園出場校もそうだが、2年生、1年生でベンチ入りを果たした球児もいる。
 このベンチ入りした2年生以下が新チームの中核になるのだが、甲子園出場校は秋季大会でやはり苦戦する傾向は否めない。「始動が遅れる」とは、「中核メンバーの実力を生かしきれていない」と言えるようだ。
 「たとえば、すでに実戦登板も積ませた2年生投手がいるとしますよね。当然、新チームのエース候補です。でも、3年生捕手と同級捕手のレベルの差、経験値がリードの未熟さになって現れたり、併殺プレーが取りたい場面で取れなかったり…」(前出・同)

 ベンチ入りした2年生以下が多ければ、それに越したことはない。しかし、せっかく勝ち取った甲子園行きだ。「3年生を優先して出してやりたい」という親心も監督にはあるだろう。秋季大会は敗戦覚悟で臨み、来年以降で勝負するしかないのだという。
 しかし、「甲子園に出場する」のは、有望中学生への最大のピーアール活動になるのではないだろうか−−。
 その疑問を何人かの指導者にぶつけてみた。
 「ウチの高校に来たいと言ってくれる中学生は確かに増えるそうです。練習を見学したいとかの問い合わせが学校にあったり。でも、学校側に『何とかしてくれ』とは言えないでしょう? だいたい、1学年の定員人数は決まっているんですから」(中部圏の指導者)
 特待生制度の改定も、やはり影響しているようだ。前出の関東圏監督もこう続ける。
 「甲子園出場を機に学校にお願いしなければならないものが他にたくさんありますから。外野ネットを高くしてもらいたいし、ゲージ、室内練習場のネットなどが老朽化しているので、まずは施設面から」

 今夏、2年以上続けて甲子園出場を果たした高校は、どうやってその高いレベルを新チームに継承させたのだろうか。今回、連続出場を果たした高校は、「施設的には恵まれている方だ」とは聞いている。指導者の熱意も、もちろんあるだろう。
 また一般論として、人数が多ければ、レギュラー陣のレベルも高い。今夏の出場校のなかで野球部員がもっとも多いのは、聖光学院の124人。もっとも少ないのは智弁和歌山の30人だ。智弁和歌山・高嶋仁監督の「1学年10人まで」の方針は有名である。奇しくも、最大部員数と最少部員数の両方が「連続出場校」のなかにあったわけだが、70人強、80人強という高校はかなり多かった。

 一方で、「甲子園に出たからといって、(来年4月の)入部希望者が増えることはない」と言い切る監督もいた。
 「各学年にプロに行ける素質を持った子を集めればいいんだよ。そうしたら…」
 某有名校指導者の言葉だ。冗談だが、一理ある。有望中学生を毎年確保していけばいい…。『甲子園出場が高校を決めるポイントになるか?』を実際に中学生に聞いてみた。あくまでも、こちらが取材した限りだが、彼らが高校を選ぶ最大のポイントは、「試合に出られるかどうか」だった。「甲子園出場は夢、でもその前に試合に出たい」というニュアンスである。
 「大所帯の高校に行き、勝負してやる!」という球児も少なからずいた。「指導者になりたいから、あの監督のもとで学びたい」と、明確な目標を持つ者もいた。だが、こちらが取材した限りでもっとも多かったのは、「試合に出られるか出られないか」である。その次に多かったのは「監督の性格」。「すぐ怒る監督は怖いからイヤだ」と言う。
 連続出場を果たすには、それなりの部員数を確保しなければならない。しかし、次世代の高校球児予備軍を惹き付けるアピールポイントがなければ、振り向いてくれないのだ。父母に響くのは進学率の高さ。中学球児には「試合に出られそう」という期待感だ。

 甲子園出場が中学生球児への「アピールポイントにはならない」とは言わない。甲子園は高校球児の目標であって、実際に入学してきた球児たちが「行きたい、出たい」と思えるような指導が重要となってくる。先輩たちの甲子園での奮闘を見て、「次は俺たちの代が!」と思ったら、連続出場できるのだろう。中学の時分から「試合に出たい」「大所帯はイヤ」「指導者がどうの」と“理屈”をこねているわけだが、現代っ子をその気にさせるのは並大抵ではない。
 決勝戦に進出した光星学院の野球部員3名の飲酒が発覚…。ちょっとした気の弛みが大失態に繋がるのだ。「連続出場」を果たす難しさを再認識させられた。(スポーツライター・飯山満)

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