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1基5000億円 福島事故後初 原発輸出で先陣を争う三菱重工、日立、東芝 あきれた商魂(1)

 安倍普三首相が5月の連休中に、中東歴訪の一環としてトルコ訪問を予定している。トルコといえば、イスタンブールは2020年夏季オリンピック招致の最大のライバル。いわば“敵地”への殴り込みだ。
 むろん、首相訪問は五輪招致の綱引きとは関係がなく、トルコのエルドアン首相と「安保問題など、広範に意見交換するため」(政府筋)とされる。実はその際、東電の福島事故後初めてとなる日本からの原発輸出を巡って「政府間合意を結ぶ段取りになっている」と関係者は打ち明ける。

 経済成長が著しいトルコは電力需要が急増している反面、まだ原発がない。そこで2023年までに3カ所の原発建設を計画し、既にロシア企業が最初の受注を決めている。同国2カ所目となる黒海沿岸のシノプでの原発計画では、日本、韓国、中国、カナダの4カ国が壮絶な受注競争を展開した結果、三菱重工業と仏アレバ社連合に決定することが確実となった。その総仕上げとして「両国政府が原発建設の合意書に署名するのを待って、トルコ政府が三菱・アレバ連合に優先交渉権を正式に与える」(同)というのだ。

 建設する原発は4基。1基の建設費は約5000億円に達し、総事業費2兆円に及ぶビッグプロジェクトだ。'17年に着工し、'23年の稼動を目指している。
 「当初は東芝・東電連合が大本命と見られたのですが、福島原発事故で様相は一変した。原発の保守・運営を担うはずだった東電は身動きが取れなくなり、トルコ側の意向で計画は一度白紙になった。この隙に乗じて韓国や中国企業が巻き返しを図ったのですが、最終的に三菱・アレバの技術力がライバルを上回った。トルコが伝統的に日本と親密なことも影響しているようです」(経済記者)

 安倍首相の“表敬訪問”もうなずけるわけだが、より深い理由も指摘されている。
 東電の福島原発事故後、民主党政権は「収束宣言」を出したにもかかわらず、原発輸出には消極的だった。一方、原発再稼動に道筋を付けたい安倍首相といえども、国民の根強い原発アレルギーの前に新たな原発建設までは踏み込めない。ところが新興国では、電力需要の急増を背景に原発建設計画が目白押しだ。こんな現実を知れば知るほど、根は原発推進派の安倍首相が原発輸出に活路を求めないわけがない。

 原発メーカーに至っては、さらに切実だ。繰り返せば原発建設は、複数の企業と連合軍を組むにせよ、1基5000億円の現ナマが転がり込む“金のなる木”である。国内で新規建設が期待できなければ、海外に打って出るのが手っ取り早い。まして原発は「1基つくればメンテナンスだけで十分食っていける」と囁かれるほど“商売”としてはオイシイのが実情だ。
 だからこそ東芝は年間1兆円、三菱重工は6000億円、日立にしても3600億円の原発ビジネス構想をぶち上げている。福島の大惨事は今なお深刻な汚染水漏れ事故をもたらすなど収束には程遠く、まだまだ復興への道は険しいが、それを尻目にソロバン勘定に長けた原発メーカーは、存分に商魂を発揮しているのである。

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