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“ラク”を好んだ人間たちの、セックスと醜態。舞台『裏切りの街』。

 ツーショット・ダイヤルで出会った男と女。何をするにもラクを好む二人を結ぶ接点は愛ではなく、セックスだった…。小演劇の異端児とされた三浦大輔初の書き下ろし作品として注目される『裏切りの街』。(渋谷のパルコ劇場5月30日まで)は、現実から逃げる男女の物語。決断を先送りにし、その先にあるものは…。

 ストイックとはほど遠い25才のフリーター裕一(田中圭)は、OLの里美(安藤サクラ)の部屋に住み、母親に仕送りしてもらい生活している。毎日ヒマで、する事といったらオナニーばかり。ある日たまたまツーショット・ダイヤルで繋がった自分以上に「無気力」な人妻・智子(秋山菜津子)と出会い、お互いラクな関係を楽しむ。そのうち彼らが一番キライな「面倒くさい現実」が頭をもたげて…。

 おそらく作者の投影と思われる主人公は、妙にやさしく、振り子のように行ったり来たり、現実の直視を避けている。世間は、そういう人を「ダメな人」と呼ぶのであるが、本来それが人間であり、リアルな現実と向き合える人の多くは無理をしているのではないか。そんな結論にたどり着けるのは、自分の醜態を曝す事に対して覚悟を決めた三浦大輔ならでは。ゆるめの長丁場ながら、ジリジリと心の奥底に効いてくる舞台だ。

 気の弱い主人公裕一を演じる田中圭の、ニートとは思えない肉体美は必見。貞淑そうに見えて壊れた内面をもつ秋山の智子、優しく裕一に接するが実は威圧的な安藤の里美、一見気さくに見えるが、時に怪しく怖い智子の夫を演じる松尾スズキ、それぞれのキャラクターには2面性があり、芸達者な役者たちがそれぞれ見事に演じ分けている。ラストに流れる「銀杏BOYZ」の峯田和伸による主題歌「ピンクローター」がなぜか優しくせつない。

 『裏切りの街』は、(渋谷パルコ劇場http://www.parco-play.com/web/page/)で5月7日(金)から5月30日(日)まで。

写真:パルコ・プロデュース公演「裏切りの街」撮影:谷古宇正彦

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