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【雅道のサブカル見聞録】東方系二次創作は新たな音楽思想

 不振が続く音楽業界。CDセールスは年々落ち込み、売り上げ減少には歯止めが効かない状況となってきている。しかし、最近、インディーズの世界でこの復活のカギとなりそうな音楽思想が支持を受けている。それは“著作権フリー”といわれる著作権料を払わずに、自由にミュージシャンやサウンドクリエイター達が原曲アレンジなどの二次創作活動が出来るというシステムだ。

 一般的な考えなら、無制限に楽曲のアレンジ権利を与えれば、原曲が売れなくなり、著作者の収入がなくなり、やがては消滅すると思う人が多いはずだろう。しかし、著作権の拘束がないのアレンジ曲の多くはネットの動画サイトにアップロードされて公開される。そして、動画サイトで視聴したユーザーが、アレンジ曲と一緒に原曲にも興味を持ち、同時に購入するケースが多いのだ。著作権の管理が最も厳しいとされている音楽業界でこの活動は画期的といえる。

 この方法で今最も成功を納めているのが“東方系”と総称される音楽である。この東方系で活躍するミュージシャンたちが原曲にしているのは上海アリス幻樂団という、代表のZUN氏がほぼ一人運営するクリエイター組織が制作したパソコン用シューティングゲームのBGM。ZUN氏が作曲した楽曲は、多く人々にインスピレーションを与え、東方をベースとして楽曲を制作するものが増えているのだ。その代表的な存在が、岸田教団、石鹸屋、IOSYSなど。

 ちなみに、音楽業界で、“著作権フリー”の発想で成功を納めているジャンルとしてレゲエがある。レゲエの世界ではリディムという原曲を元に歌を付けたり、リディムそのものをリメイクするクリエイターが著作権フリーの素材をシェアしあう文化がある。他にレゲエでは多くの人に曲を知ってもらう為に、サウンド・システムという移動式の野外音楽装置が発展したが、東方系でこのサウンド・システムの代わりを果たしているのがYoutubaやニコニコ動画などの動画サイトであろう。

 他にも、東方はキャラクター二次創作物の世界にも革新もたらしている。それまでの二次創作作品の多くは、企業や著作者の描いた版権キャラクターを元として漫画、小説など制作するというものだったが、東方では作中のキャラ全ての著作権がBGMと同じくフリーとなっている。東方シリーズのキャラクターはキャッチーさと表現方法の自由さで人気を呼び、コミケなのどの同人誌即売会では一大ジャンルを形成するに至っている。いずれは日本の音楽業界もこの流れを無視することはできなくなるかもしれない。(斎藤雅道)

※東方系の二次使用は非営利目的に限ります。

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