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苦渋の選択を強いられる家族の物語。加藤健一事務所『木の皿』

 「消えた高齢者」、「無縁社会」など、とかく家族の絆の“薄れ”が問題となっている。そんな昨今に限らず、年老いた親を持ち、自らも人生の折り返し地点を過ぎた子どもたちが抱える介護の問題は普遍的だ。今より50年以上も前のアメリカで生まれ、現在も高い評価を得ているエドマンド・モリス作の戯曲『木の皿』。加藤健一事務所は初夏の「モリー先生との火曜日」に続き、人生の終焉に思い憂う老人の物語をこの秋の公演に選んだ。頑固で偏屈だけどなぜか愛らしい老いた勇者・ロンを演じるのはもちろん加藤健一。

 テキサスの田舎町。デニソン家の次男グレン(新井康弘)は、ある日突然プライドの高い78歳の父ロン・デニソン(加藤健一)を介護施設に入れるか、入れないかの選択を迫られる。父を家から追いやるのは気が引ける上に、多額の費用に頭が痛い。しかし父の面倒を見ることに疲れ果てたグレンの妻クララ(西山水木)は、父の現状を訴えるためにシカゴに住む兄のフロイド(金尾哲夫)を呼び寄せるが…。

 「自分の人生を生きたい。」という妻の訴えに、うろたえる夫。ロンだけに使われる木の皿は一人の誇り高き人間が、老いて家族のやっかい者となり家を負われる空しさを表している。拝金社会を象徴する老人施設のフォーサイス(土屋良太)、共に老いらくの夢を語るロンの友人サム(有福正志)、老いとは対照的に若き肉体をさらした下宿人のエド(小椋毅)。それぞれの立場の登場人物たちがロンの行く末を見守り、そして左右する。50年代風の衣装に身を包んだベッシー(山下裕子)やジェイニー(宇都美由樹)の陽気な女性たちがシリアスな場面に度々現れ、場を華やかに。ただ一人、最後まで祖父を思う孫娘のスーザン(加藤忍)が放つラストのひと事。これが強く胸につきささる。(コダイユキエ)

加藤健一事務所「木の皿」
9月8日(水)〜12(日) 下北沢 本多劇場
9月15日(水)京都府立府民ホール アルティ
10月16日(土)兵庫県立芸術文化センター・阪急中ホール

(加藤健一事務所 http://homepage2.nifty.com/katoken/)

写真…「木の皿」の一場面 左より…加藤忍 加藤健一 西山水木
(撮影:石川純)

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