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【不朽の名作】ベジータの魅力を堪能できる「ドラゴンボールZ 燃えつきろ!! 熱戦・烈戦・超激戦」

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パッケージ画像です。

 先週よりテレビアニメ『ドラゴンボール超』で新シリーズがスタートした。現在ドラゴンボールシリーズは漫画原作ではないオリジナルシリーズとして放送しているが、それ以前に原作を元にテレビ放送されていた『ドランボールZ』でも孫悟空の自動車教習の話など、有名なオリジナルストーリーが存在する。その時期は劇場作品も毎年公開され「東映アニメフェア」のメインを張る人気コンテンツとなっていたが、今回はその中でも正当な意味でも、ネタ的な意味でも特に人気の高い93年公開の『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!! 熱戦・烈戦・超激戦』を扱う。

 この作品、一言で言うと良くも悪くもべジータの魅力が極端に凝縮された作品となっている。公開は、ちょうど地上波でセル編のクライマックスが放送されていた時期と重なる。セル編でべジータは自身の強さに調子に乗り、セルを完全体にしてしまい、その後圧倒され、へタレになるという醜態をさらしていた。実は、これまでにもべジータが相手の強さにおびえることは何度もあったのだが、ここまで情けない姿は初で、同作でもそのキャラクター性がいかんなく発揮されており、一挙手一投足が笑い所になるほど詰め込まれている。正直、主役の悟空を食う勢いだ。

 まずこの作品、べジータが原作やTVアニメでやらかしていた増長からの敗北、その後のヘタレ描写、もう一度対決する決心はするが、また圧倒され、自分では勝てないから文句をいいつつも他のキャラに託すという一連の行動を70分の本編に収めている。しかもべジータの調子の乗らせ方が、いい意味で悪質だ。この作品では、隻眼の中年のサイヤ人・パラガスが、地球でお花見中のベジータのもとにおもむき、「新惑星ベジータの王になっていただきたくお迎えに上がりました」「伝説のスーパーサイヤ人を倒して欲しい」と告げたことで始まる。

 『ドラゴンボール』の本編を知らない人のために一応説明すると、べジータはサイヤ人の王・べジータ王の息子で、フリーザに母星が破壊され、サイヤ人がほぼ全滅した後も王子としてのプライドを持っており、それが同じサイヤ人の悟空への強烈な対抗意識にもつながっている。という訳で「べジータ王」と媚びへつらわれたべジータはまんざらでもない様子で、その気になって王としてドヤ顔で振舞ってしまう。もちろん、これは罠で、過去にべジータ親子に遺恨があるパラガスが仕掛けたものだ。劇中では早々に罠であることが視聴者には説明されてしまうため、知らないで偉そうにしているべジータに笑いが止まらない。本編中のパラガスの言葉を借りれば「その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ!」という状態だ。

 そして同作で最大の敵となるブロリーも、このべジータのヘタレ描写強調に大きな手助けをしている。パラガスの息子で、伝説のスーパーサイヤ人はこのキャラと同一人物となっている。自身でも制御できないほどの力を持ち、生まれた時に悟空の泣き声に泣かされたことで悟空に強い憎悪を持っているという設定だ。正直、悟空との因縁として、その設定は弱い気がするのだが、その分、べジータの無様さが際立つ形となっている。パラガス自身はべジータに遺恨を持っているが、ブロリーはべジータにはさほど興味がないのだ。「カカロットー!(悟空の惑星べジータでの名前)」と猪突猛進するブロリーに、半ば無視された状態のベジータは、無視するなとばかりに攻撃を仕掛けるが無傷。ひとにらみもされることなく実力の差に絶望し「おしまいだ〜」と戦意を失う。ここまでのべジータの評価を下げるシーンは、実は原作にもなく、賛否がわかれる所かもしれないが、感情のふり幅が他のキャラより激しいべジータという人物をかなり極端に表しているシーンともいえるだろう。

 結果的にブロリーの圧倒的な強さの強調にも役立っているし、このあたりの描写がなければ、ブロリーがその後、『ドラゴンボールZ 危険なふたり! 超戦士はねむれない』、『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!! 勝つのはオレだ』と2作品に登場するという人気キャラに成長してくこともなかったかもしれない。作中での強さで上から数えた方が早いべジータの戦意喪失は、敵キャラも魅力的にさせてしまう効果があるのだ。

 その後べジータはピッコロにも叱責されるという残念な状態になるが、いつも通り自身の誇りを思い出し、勝てないとわかっていても果敢に挑む。時間的制約もあり、たびたび原作で見せたほどの決意はないが、それでもファンが「これぞべジータ」と安堵するシーンには仕上がっている。とはいっても、直後に「ふぉぉ!!」という情けない声をあげてブロリー岩盤に叩きつけられるけど…。ちなみに、このシーン、ネットなどで散々ネタにされまくっているので、本編を知らなくても知っている人は多いだろう。

 最後のブロリーの倒し方は、ご都合主義的なうえ安直すぎて、あまり良いとは言えないが、「誰がお前なんかに」的な発言を繰り返しつつも、べジータが最終的には悟空にパワーを貸すあたりは、文句言いつつも悟空をどこかで認めている、ツンデレキャラの部分がわかりやすくて良いのではないだろうか。また、この後の劇場版では本編の都合上、悟空、べジータ、悟空の息子である孫悟飯、べジータの息子で別の世界線から来た、未来トランクスが揃って敵に立ち向かうということはなくなったので、その意味でも貴重な作品だ。

 べジータがどうして人気キャラなのか、知らない人がこの作品を観ればおそらく8割くらいわかるのではないだろうか? 残り2割で勘違いされそうだが…。とはいっても現在放送中の『ドラゴンボール超』では、さらにキャラ崩壊が進んでいるので関係ないかもしれない。
 
(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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