前田健太(広島)
■実現の可能性:100%
■契約規模:4年6000万ドル(72億円)〜5年8000万ドル(96億円)
マエケンはメジャーの数球団が先発の2、3番手で使える投手と評価し、獲得を検討している。そのため、球団がポスティングを容認すれば、メジャー移籍は100%確実になる。
昨年は11勝止まりだったため、球団から「これではファンの後押しを得られない」と言われ残留した。しかし今年は文句なしの成績(15勝8敗、防御率2.09)で、大車輪の働きを見せた。ファンも行かせてやろうという空気になっているので、球団も容認せざるを得ないだろう。
本命は球団幹部が度々視察に来ているダイヤモンドバックスだが、ここにきてナショナルズも意欲的だ。担当スカウトがマーティ・ブラウン環太平洋地域コーディネーター(カープの前監督)なので、強力な対抗馬になりそうだ。
それ以外ではレンジャーズ、ジャイアンツ、アストロズ、ドジャースなどがポスティングに入札する可能性がある。マエケン本人はヤンキースかレッドソックスに行きたいようだが、ヤ軍は今オフ、資金不足で大型契約は難しい情勢。レ軍も今のところ何のアクションも起こしていない。
米国のスポーツサイト『マイナーリーグ野球』は、5年7700万ドル(93億円)規模の契約になると予想している。
李大浩(ソフトバンク)
■実現の可能性:20%
■契約規模:1年100万ドル(1億2000万円)〜150万ドル(1億8000万円)
李大浩は並外れたパワーがあるだけでなく、器用さも備えていて変化球を打つ技術も高いが、いつも体重オーバーで全身に分厚い贅肉を付けており、鈍足で守備範囲も狭い。そのためDHで使われることになるが、DHのレギュラーになるには25本塁打以上打てるパワーが必要で、それをクリアするのは不可能だろう。
メジャーは球場が広く、ピッチャーの球速も平均5キロほど速くなる。ツーシーム系の投球に手こずるケースも多くなるので、日本や韓国から移籍した打者は本塁打が半分以下に減るケースが多い。彼も一発の大幅減は避けられないだろう。
獲得に乗り出す球団があるとすれば、レンジャーズかもしれない。右のDHに適材がいないからだ。レ軍には同じ韓国・釜山出身で幼なじみだった秋信守がいる。秋は主力の一人なので、GMに獲得を進言すれば入団できるかもしれない。
年俸は今季の額(5億円)の3分の1程度になるだろう。だが、実際にはオファーが一つも来ない可能性の方が高い。
そうなった場合、現行の2年10億円の契約に2割くらい上乗せした規模の契約を要求してくるだろうが、応じられるのはソフトバンクだけだ。結果的に年俸が5、6億円に上がった形で再契約になるだろう。
トニー・バーネット
(ヤクルト)
■実現の可能性:40〜50%
■契約規模:80万ドル(9600万円)前後
今季ヤクルトの守護神として驚異的な働きを見せたバーネットはポスティングで大リーグ球団からのオファーを待つことになった。球団はすでにポスティング金を50万ドルに設定しており、この金額以上で入札してくる大リーグ球団があれば、念願だったメジャーデビューへの道が開ける。
実はバーネットはメジャー経験が全くない。22歳でプロ入り後、ダイヤモンドバックスのマイナーで投げていたところ、球威を見込んだヤクルトから声が掛かり、メジャーを目前にして来日する道を選んだのだ。
来日2年目、リリーフに転向。日本の細かい野球にもまれるうちに制球力のあるパワーピッチャーに成長した。
今季は3勝1敗41セーブ、防御率1.29という驚異的な数字をマーク。メジャー球団は日本のプロ野球を極端な投高打低と見ており、投手成績はしっかり評価される。32歳で今がメジャーを目指すラストチャンスであるため、本人も張り切っている。表にあるように、日本で鍛えられた外人投手が米国にUターンして大化けするケースはたくさんある。さらに1.29という防御率はメジャー契約のオファーが来るレベルで、複数球団が興味を示す可能性は大いにある。なければ、引き続きヤクルトでクローザーを務めることになる。
スポーツジャーナリスト・友成那智
ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は各媒体に大リーグ関連の記事を寄稿。'04年から毎年執筆している「完全メジャーリーグ選手名鑑」(廣済堂出版)は日本人大リーガーにも愛読者が多い。