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球界地獄耳・関本四十四の巨人軍、ダッグアウト秘話(8)

 長男・一茂を後楽園球場に置き忘れ事件など、長嶋さんにまつわる笑い話の伝説は数限りなくあるが、その原因はハッキリしている。「長嶋茂雄モード」にスイッチが入ると、競走馬の遮眼帯と同じようなもの。普通の人間は、前を向いたら120度くらい見えるが、長嶋さんの見える角度は極端に狭まってしまうんだよ。周囲は目に入らなくなる。

 オレが実際に目撃、体験した珍談、奇談をいくつか披露する。ある日の後楽園球場のロッカーだった。長嶋さんは靴が濡れているのに気がつき、拭こうと思った。そこに白い物が目に入ったから、手にとって拭いたんだ。そして、「さあ、頑張ろう」と声を上げた。その白い物は、なんと黒江さんの半袖シャツだったんだ。もちろん、靴墨で真っ黒になっていたよ。
 スイカ伝説もこの目で見た。大阪の宿舎は竹園旅館で元肉屋さんだから、肉がうまい。我々が焼き肉を食べていると、「みんなおいしいスイカがあるぞ。食べろよ」と長嶋さんが声をかけてくれた。食事が終わって、さあ切り分けられたスイカをみんなで食べようと思ったら、どのスイカも種のない、上の部分がすべて食べ尽くされている。長嶋さんのスイカ伝説の生き証人になってしまったよ。
 名古屋の宿舎ではメロン事件があった。ジョーさん(城之内邦雄氏)がマスクメロンを食べようとしたら、甘くおいしいところだけ食い散らかされていたんだ。
 「ウワーッ」とジョーさんは仰天したけど、オレはこう言ったんだよ。「ジョーさん、こんな食べ方をする人は1人しかいないじゃないですか」とね。食べてるところを見ていなくても、犯人はすぐにわかってしまう。
 グラウンドでも同じですよ。「長嶋茂雄モード」にスイッチオンしたら、視界は前方3センチ程度。バットケースから目に入ったバットを持って打席に向かい、タイムリーを打った。そのバットが他人の物だったなんてことは日常茶飯事だったよ。
 
 長嶋さんと親しい放送関係者によると、試合前の打撃練習が絶好調で、試合が終わった気分になり、一風呂浴びて帰ろうとしたこともあるというからね。たまたま目に入った他人のバットでタイムリーなんてのは、朝飯前だろうね。
 珍談、奇談の長嶋伝説には、鬼のように怖い山崎マネージャーも「ミスターならしようがないか」と苦笑するだけで、お手上げだったね。王さんはああいう人柄だから、何も言わないし、柴田さんら小姑軍団も文句は言わなかったね。
 唯一、長嶋さんを茶化していたのは、土井さんだ。入団時から「オレはミスターの立大の後輩だ」ということを、周囲に吹聴していたからね。立大の後輩として茶化せたんだろうね。

<関本四十四氏の略歴>
 1949年5月1日生まれ。右投、両打。糸魚川商工から1967年ドラフト10位で巨人入り。4年目の71年に新人王獲得で話題に。74年にセ・リーグの最優秀防御率投手のタイトルを獲得する。76年に太平洋クラブ(現西武)に移籍、77年から78年まで大洋(現横浜)でプレー。
 引退後は文化放送解説者、テレビ朝日のベンチレポーター。86年から91年まで巨人二軍投手コーチ。92年ラジオ日本解説者。2004 年から05年まで巨人二軍投手コーチ。06年からラジオ日本解説者。球界地獄耳で知られる情報通、歯に着せぬ評論が好評だ。

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