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連載ラノベ 夢ごこち(23)

 土手を下ってようやく川原にたどり着くと、風が吹きつけてきた。水音も、耳に響いてくる。真横から、川の流れが吹きつけてくる感じ。しぶきも飛んできそう。

 健太君は川の方にいる。私は、近くあった大きな石に腰を掛けた。
 川がうねっている。水位が増してるんだ。川のよどみにつかえた流木が、流れに押されたり底石に跳ね返ったりしていた。

 対岸で、雑草が風になびいた。

 突然、草の中に、男の人が見えた。呼吸が詰まって、腰掛けたまま足踏みしてしまった。けど、また見ると、誰もいなかった。

 男の人がいた場所で、草がなびいている。誰もいない。けど、確かに人が見えた。それも、髪の毛が短くて、黒い服を着て、肩幅の広い男の人だ。
 なんだろう。

 どんなに眺めても、対岸には人の気配すら見つけられない。川の上流へ目を向けてみた。空はぼんやりしていて、もやがかかっているよう。山の方が暗い。

 川の上を、鳥が一直線に飛んでいった。山へ行ったみたい。くちばしがするどくて、すれ違う時に、私を盗み見ていった気がした。
 なんだろう。体が冷える。

 吉原君は、怪鳥が天下に大乱を起こすって、言っていた。空がずっと真っ暗なままになって、鳥たちがくちばしをとがらせて、世が乱れる。橋の下に人が吊される。

 さっきの鳥、魔界へ行くのかな。だったら怪鳥だ。けど、怪鳥があんなに小さいわけがない。きっと、怪鳥の手下だ。
 
 魔界の鳥は、あの雲の中。世を乱す怪鳥は、あの雲の中にいるんだ。

 健太君が、いつのまにか目の前に来ていた。ずっと私を見ていたのかな。私、ぼんやりしていたのかも。

 「そろそろ、帰ろっか」
 座っていた石から腰を上げると、健太君の顔も私の動きにあわせて上を向いた。健太君の表情が、少し違う。どうしたんだろう。笑っているみたい。

 「行こっか」
 健太君をさそって、土手を上がった。すべり下りた時よりは楽だったけど、手をついたひょうしに、爪の間に土が入ってしまった。おばあちゃんの家に着いたら、洗い流そう。

(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)

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