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弱くても食べていける強固な組織〜日本相撲協会(1)

 大相撲、プロボクシング、プロレス、キックボクシング、K-1、総合格闘技、シュートボクシングなど、日本には数多くのプロ格闘技が存在する。

 そのほとんどの選手が格闘技一本で生活するのは困難。世界的なメジャー競技のプロボクシングでさえ、それだけで食えているのは世界チャンピオンクラスだけ。かつて、団体数、選手数が少なかった頃のプロレスラーは食べていけたが、今や大方のプロレスラーは他に副業、本業をもっている。

 そんななかで、末端のすべての力士まで全員が食えるシステムを構築しているのが相撲界だ。現在、開催中の1月場所(初場所)現在で、番付に載っている力士数は676人。これに新弟子検査に合格した9人がプラスされる。約700人が末端まで食べていける日本相撲協会は、やはり凄い組織である。

 09年11月場所、最弱力士が話題になったことがあった。03年7月場所で初めて番付に載って以降、実に38場所連続で負け越していた序ノ口の森麗(もりうらら・大嶽=現24)が、初の勝ち越しを成し遂げた。むろん、これは相撲界のワースト連続負け越し記録。初めて勝ち越すまでに、足かけ7年を要した森麗。他の格闘技なら、とうに強制引退させられたに違いない。どんなに弱くても、本人にヤル気があって、部屋の師匠が了解すれば辞めずにすむのが相撲界なのだ。その森麗は翌場所から再び負け越しが続いたが、今場所、7場所ぶり2度目の勝ち越しを決め、来場所での序二段昇進が確実になった。

 相撲界で一人前扱いされるのは、十両以上の関取のみ。協会から給与が支給されるのは十両以上。幕下以下の力士は力士養成員と称され、場所ごとに場所手当が支給される。最下位の序ノ口力士は1場所7万円。他にわずかばかりの勝星奨励金、勝越金が付く。序ノ口優勝賞金は10万円だが、弱い力士に縁はないだろう。従って年6場所全敗しても、下っ端の力士でも年収42万円は保障されている。

 一般人なら、この金額で生活することはできないが、衣食住に金が一切かからないのがミソ。幕下以下の力士は慣習上、所属部屋にある大部屋で生活するので、家賃はかからない。食事は部屋のちゃんこを無償で食べ放題。衣類も力士はプライベートでも原則洋服禁止。地位で着る物も厳格に決められ、関取は紋付羽織袴だが、下位力士は着物しか着用が認められていないため、部屋から支給されたものを身に着ければ買う必要もない。また、所属部屋に関取がいるかどうかも重要。関取の付き人になれば、小遣いがもらえる。これは、所得に表れない貴重な収入となる。

 そんなわけで、年収42万円でも力士は生活していけるのである。
(ジャーナリスト/落合一郎)

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